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『メガロポリス・ノックダウン』コミックス1巻発売記念! 田澤 類氏インタビュー


小学5年生の女の子、暴力満載のクライムアクションゲームにハマってしまう! ふとしたことで目にした過激なゲームに、親の目を盗みつつもどんどんとハマっていく主人公・的野鋭美の姿を、リアルなゲーム描写で描いたコミック『メガロポリス・ノックダウン』。
本サイトにて好評連載中の本作だが、コミックス1巻の発売を記念して、作者の田澤類先生にインタビューを実施。物語誕生のきっかけから、世界観設定について、そして気になるこの先の展開について、たっぷりとお聞きしました。もちろん先生のゲーム歴についても!

 
●作者プロフィール
田澤類(たざわ るい)。1978年生まれ。2005年『凜音』で第52回ちばてつや賞 準優秀新人賞を受賞、2007年『戦乙女』にてデビュー。長く連載作品が持てず、アシスタント業を中心にマンガ業界で生き抜いてきたが、ネットで自主掲載した『メガロポリス・ノックダウン』が話題を呼び商業連載の運びとなる。ゲーム歴は、元々『ゼルダの伝説』シリーズが好きでというゲームファンだが、高校生時代に『007 ゴールデンアイ』にて洋ゲーの楽しさを知り、18歳のときに出会った『Grand Theft Auto III』でその虜に。現在でもバリバリのゲーマーで、最近は『Destiny』がお気に入りとのこと。
ツイッターアカウント:https://twitter.com/ruiji0

■濃密なゲーム体験があるから描けた、現実と地続きの世界観

――まずは物語の着想をどう得たのかをお聞かせください。やはり、ご自身がゲームが好きだったからなのでしょうか?

そうですね。元々ゲームが好きというのもあるんですけど、アシスタント業って金はないけどヒマはあるので、ゲームをやる時間はたっぷりあるんです。それを仕事場で「今日はオンラインでこんな人とあった、こんな出来事があった」と話していたところ、アシスタント先の森繁拓真先生から、そこまで語れるんだったら、いっそ作品にしてみようと勧められたのがきっかけです。

――作中にゲーマーとしての日常が色濃く描写されているのは、そういう実体験があったからこそなんですね。

はい。例えば、1話で鋭美がひどい3D酔いをしてますけど、あれはそのまんま僕の体験です(笑)。マンガを書く人ってゲーム、アニメ、映画のジャンルが好きなので、だいたいのゲームジャンルに関してすでに手がつけられている状態だったんでけど、僕が好きないわゆる“洋ゲー”(※)と呼ばれるジャンルは手薄だった……というのは後から気がついたんですけど(笑)。

※洋ゲー:海外、主に欧米で制作されたビデオゲームの総称。国産ゲームとは違った味わいが楽しめることで、好んで趣向するゲーマーも多い。


(コミックス1巻 P163より)

――たしかにRPGや格闘ゲーム、その文化を題材にした作品は目にしますが、洋ゲー、たとえば作中ゲーム『メガロポリス・ノックダウン』(以下、メガノク)によく似た『Grand Theft Auto 』(※以下、『GTA』)を描いたマンガって少ないですね。

※『Grand Theft Auto』:ギャングの一員となって、リアルに再現された広大な都市の中でのミッションをこなしていくアメリカ産のアクションゲーム。自由度が高く、暴力・窃盗・銃撃戦なんでもござれな非日常ぶりがユーザーを虜にし、シリーズ第5弾『Grand Theft Auto V』は全世界で7500万本以上を売り上げている。

はい。作中にも書きましたが、世界でいったら『GTA』が一番メジャーで、日本のRPGの10倍以売れています。でも日本ではマイナー扱い。そこのギャップもまた作品にしやすいという部分でした。これだけ世界の人が楽しく遊んでいるというのを紹介できるだけでも、訴えかけられるんじゃないかなと。

――洋ゲーの面白味や、それを取り囲むゲーマー文化を描いてみたかった、と。

好きであるのと同時に、今のゲームシーンと地続きなものが描きたかったんです。メガノクは、『GTA』や『ファークライ』『ウォッチドッグス』(※)など、今ある洋ゲーの集合体として設定しています。それでも普段ゲームを遊ばない人からすると、「これって近未来のゲームだよね?」と思われているんですよ。どれも数年前に作られたゲームですけど、その魅力が広く伝わっていないなって。

※『ファークライ』『ウォッチドッグス』:どちらも現代を代表する人気洋ゲー。前者は広大な自然環境の中を自由に動き回れ、後者はスマホで街中の電子機器を自在にハッキングできるという特徴がある。

――遊び手を選ぶとはいえ、世界で評価されているゲームが日本だけマイナーというのも不思議な話ですね。ところで、連載まではスムーズに?

連載前にいろいろなところに持ち込みをしましたが、棘のある内容な分だけ「掲載はちょっと難しい」という反応続きでした。持ち込んだ先には気に入ってくれた編集者もいたのですが、やはり内容的に待ったがかかって「基本設定は変えなくていいから、せめて主人公を18歳に」といった変更を求められたり。それだと物語の趣旨が変わってしまうので、最初は自主発表という形で、ニコニコ静画の個人アカウントでの発表となりました。

――それが現在商業連載となって話題を呼んでいるわけですから、勝負をかけてちゃんと勝ち取ったということですね。

そうなんですかね(照れ笑)。現在連載中のバージョンは、わかりづらいところを編集さんの指摘で直したりしていますが、基本設定は自主発表版そのままで、マイルドにした部分はないです。

■小学生の鋭美だからこそゲーム世界の機微が見えてくる

――主人公の的野鋭美(まとの えいみ)を小学5年生の女の子にした理由というのは?

これも実体験に基づくもので、『GTA』などオンラインゲームをプレイしていると、どうも未成年ではないかというプレイヤーと遭遇するんです。実際のところはわかりませんし、詮索をするわけではないんですけど、やはり行動や言動から“若いな”と実感するときがある。

――あ、あります! 私も18禁ゲームではないですが、13歳の凄腕プレイヤーと遭遇してすごく驚きました。

ありますよね(笑)。しかもそういう子って、利発でしっかりしてたりとか、世間一般が思うようなバイオレンスなゲームを遊ぶような人種とは印象が違う……そもそもオンラインゲームって、すごくシステムが複雑なんです。ある種プレイヤーを突き放した作りなので、そこを理解してついてきて、ゲーム内のマナーを守っていられることに、素直に感動を覚えたんです。CEROのレーティング(※)的にはよろしくないことだったんですけど。

※CEROレーティング:コンピュータエンターテイメントトレーディング機構が定める、ビデオゲームの倫理規定。年齢対象ごと5段階で区切られていて、過激な内容のZ区分は18歳以上が販売対象となっている。

僕が初めてこの手のクライムアクションゲームに出会ったのが18歳のときの『GTA III』で、ものすごい衝撃を受けたんですけど、いまの小中高生がこの手のゲームに出会ったら、やっぱり興味を持つと思うんです。僕らが子供の時代はゲームと言ったら友達と家に集まって遊ぶものでしたが、今はそれとは違った(オンラインという)現実があって、その場で起こる悲喜こもごもがある。それは『GTA』だろうが『スプラトゥーン』だろうが、さほど変わらないんです。

――それはわかりつつも、小学5年生の女の子が無邪気にクライムアクションゲームを遊ぶ姿は、なかなかに刺激的です。

大人がクライムアクションゲームを楽しむ姿だったら、たとえ悪趣味と言われようが「ほっといてくれ」で済んじゃいます。でも、もう少し下の年代の視点や価値観から見たら、その世界がどう見えるのだろうかと。問題意識というよりは素朴な疑問に近いくて、こういうゲームをやることに対しての背徳感みたいなものが顕著に出るかなと。「好きで遊んでなにが悪い!」と言い切れないくらいのバランスのほうが、緊張感があるだろうという狙いです。

――なるほど、小学生の鋭美の視点だからこそ、ダメな大人の姿がより見えてくる部分はありますね。2話でオンラインデビューした鋭美がほかのプレイヤーから罵倒されて「ちゅ、中学生じゃねえし!」とか「いい年してガキのくせに!」とわめくシーンとか(笑)。


(コミックス1巻 P53より)

僕が黎明期のオンラインゲームに初めて触れたときに感じた挫折や憤りを、強調して描いている部分はありますね。

――オンラインゲームって楽しさもあるけど、怖い部分もありますよね。

それを超えてわざわざ入ってくるわけだから、ちょっと根性が座っているし、若いうちから遊んでいるから順応性が高いですよね。アッというまに強くなって、ある種羨ましさも覚えます。鋭美もそうですけど、生まれたときからコントローラーにアナログ右スティックがある人間と、十字ボタンで育った僕らとはネイティブさが違う。僕自身ゲームは好きで遊ぶんですけど、決してうまいプレイヤーではない。その意味では昨今の実況者やプロゲーマーといった、明らかに人よりゲームが上手い人への憧れはすごくあります。

■マモルさんは田澤先生本人がモデル?

――メガノクで鋭美がパートナーとする背戸口 守(せとぐち まもる)ですが、ここまでのお話からすると、田澤先生自身を投影したキャラクターのようですね。

そうですね、ほぼ僕のままの生活リズムやプレイスタイルです(笑)。『GTA』をプレイしているときはなるべく民間人には被害を出さないよう……少なくとも好戦的なプレイはしないように心がけています。キャラクター造形としても、過激な鋭美に対しての逆説的な目線がいるだろうなと思っての部分もあります。ただ、腕前だけは僕と違って上手ですけど(笑)。

 

(コミックス1巻 P64より)

――1巻を読む限り、メガノク内でのエイミとマモルはいいパートナーシップを築いてますが、ふたりがこの先どうなってしまうのかはすごく気がかりです。

作中でもちょいちょいヒントは出していますが、おそらく読んでくださった方の想像通りになります。端的にいうとふたりがリアルで出会うのかどうかとか。それは、単なるオンラインゲームあるあるマンガではなく、ストーリーのあるドラマとした以上避けて通れないし、無責任にはできない部分。ルールを逸脱した行為を続けている以上は、しっぺ返しを食らうのが誠実な形でしょう。

――そこまでのプロットは考えてあると。

元々考えていた序盤の展開が終わって、この先をどうするかはやや流動的ではあります。でも、二人の関係性がより密になって、最終的にどうなるかまではすでに想定しています。

――7話では、目田千識(めた ちさと)が登場しました。やや唐突な印象を受けましたがこれは……?

 

(コミックス1巻 P163より)

名前のとおりにメタ、つまり第三者視点を受け持つキャラクターです。お気づきでしょうけど、主要な登場人物にはゲーマーとしての属性を名前に含めていて、鋭美は銃で狙いを定めるエイミング、背戸口は後詰やカバーリング担当。目立の場合はデータ派、2ちゃんねるのゲハ板的にいうと“効率厨”ですね。性格がキツめなのもそういうことです。

※2ちゃんねるのゲハ板:巨大掲示板のゲームゲーム業界・ハードウェアのカテゴリ。ゲーム情報を求めるユーザーで活発な情報交換がなされているが、他者を揶揄するような過激な書き込みも多い。

――「ゲーム大好き!」だけではないドライな視点の必要性だということですか。

鋭美の母親やニュース番組での視点といった愛なく切り捨てるシーンも描いておかないと、題材状バランスを欠くというか。遊んでいる立場としても批判意識がないわけではないんですよ、ということを。なんなら僕も『GTA』をプレイする前は、そう思っていた部分がありますし。

――目田もこの先、物語に絡んでくるのでしょうか?

もうちょっと絡んでくる予定です。実は登場はもう少し先の予定だったのですが、主人公は小学5年生だし、年頃の女の子キャラがいなさすぎるという理由もあって早まりました(笑)。まあデータ重視の人なので、バトル展開の解説役としてはちょうどいい。背戸口ひとりがしゃべっているばかりでは偏りが出てしまいますから。

■これからもかしこまらず、怒られるまで描きます!

――連載を始めて、読者からの反響はいかがでしょうか。

これはちょっと意外だったんですけど、ゲームを知らない読者さんのほうが好感触みたいなんです。ゲーマーの方だと「俺の知っている洋ゲーはもっと濃い世界だ」と、こだわりがあって。なので、サブカル好きの中でも、ゲームは通って来なかったという人のほうが面白がってくれる傾向にあるように思います。

――それだけ、好きなものを描くという気持ちがちゃんと伝わっているということかもしれませんね。ところで、実体験がベースにあるということだと、作劇においてはあまり悩まず?

そうですね。これまでの自作では「どうしようかな」と悩むことが多かったんですが、『MKD』に関しては書こうと思ったらスルスルと出てきてきました。どちらかというと、母親の話しや教室といった日常のシーンのほうが描くのに四苦八苦してます(笑)。

――ご自身でお気に入りのシーンは?

僕としては意外だったのですけど、1話で鋭美がはじめてメガノクをニュースを知るシーンです。最初のネームでは2ページくらいでサラッと描いたのですが、森繁先生から「もっと田澤くんの悪いところが見てみたい。普段こんな真面目にゲームを語ってないでしょ?」と言われまして(笑)。たしかに、ソーシャルゲームをガキ向けとディスったり、世間がクライムアクションゲームをバカにしているとか言っていて、そういう“悪意”を込めたほうがいいよ、と。僕としては導入が長くなるし、需要があるのかなと思いつつ膨らませてみたところ、その部分がすごく反応がよかったんです。「女の子かわいい」「ゲームすごい」といった感想ではなく、僕の“今の世間のゲームに対する意識ってこうなんじゃないの?”と思う部分に共感してくれたのが嬉しかったですね。

 

(コミックス1巻 P13より)

――そういう重めの前フリがあることで、鋭美がメガノクに触れたときのトリップ感がより活きてるのでしょうね。では最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

ちょっと不謹慎だったり扇情的なマンガですが、決して打算とかケレン味を狙ったわけでなく、たまたま今のゲームシーンについて思っていることをポロッと言ったことが形になっているだけなので、「こういう世界もあるんだ」と受け取ってもらえたら嬉しいかなと。ただ、あまりかしこまってもナンなので、怒られるまでは筆の向くままに描いていこうと思います。ゲームを知らない方でも「ゲームでテンションが上がってはしゃいでる女の子ってカワイイじゃん!」と思ってくださったら(笑)。

――ありがとうございました。これからも鋭美の行く末を見守りたいと思います!

(インタビュー&テキスト:馬波レイ)
コミックス1巻絶賛発売中!!

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