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【第1回】藤津亮太 漫画試し読み放浪記




新作・旧作、注目作に話題作。いろいろ気になるあの作品を、ちょっとだけ試し読み。そんな調子でマンガの世界を放浪していきます。
【第1回】 超人ロック ガイアの牙1

 
 不老不死のエスパー・ロックが主人公の作品である。正確な年齢は不明だが、1000年以上生きているのは間違いない(もっとも過去のエピソードともっとも未来のエピソードが1000年以上離れているから)。さらに驚かされるのは、このロックという主人公が同人誌で誕生したのが、1967年(!)、つまり半世紀前という事実だ。しかも現在も2誌で連載が継続中。つまり作品自体が主人公に負けないぐらい長寿なのである。

 『超人ロック』は1巻~数巻でひとつのエピソードが完結する形式だ。エピソードごとに独立しているので、気になったエピソードから手にとればすぐに楽しめる。

 最新刊『ガイアの牙』は、人類が宇宙に進出して1000年以上が経過し、辺境の惑星となった地球が舞台。連邦統合情報局の要請を受けたロックが、違法な感覚キューブ(一種のスナッフフィルムのようなもの)を作っている犯人のエスパーを追う、というエピソード。刑事モノに近いテイストだ。このエピソードにはもうひとり、ナーブというキャラクターがいて、彼はエスパーで兵士だったが、ある理由で“浦島太郎”のような状態で地球にいる。ロックとナーブと、犯人のエスパーがどう絡んでいくのか……というところで以下次巻。これから不穏なことがさらに起きそうで、続きが気になる!

 『ガイアの牙』を読みながら、「どうして『超人ロック』はこんなに長期にわたって連載を続けられたのか」について考えた。もちろん連載は編集部のさまざまな事情も関わってくるが、それとは別に、“作品が持っている寿命”とでもいうものも間違いなくある。

 『超人ロック』の場合、ロックがいろんな事件や戦いに巻き込まれるという独立したエピソードを積み重ねていくのが基本パターン。だから、長期連載しやすい設定ではある。でも、それだけで長期連載ができるわけでもない。理由のひとつはロックは圧倒的なパワーを持っているけれど、意外に“弱い”こと。『ガイアの牙』でもテレポートを使った特殊な技によって、不意打ちを食らっている。強いんだけれど、強すぎない。そうなるように敵の攻撃方法にさりげなくアイデアが凝らしてある。だから話運びにメリハリがつくし、なにより超能力合戦のインフレも起きにくい。インフレは間違いなく作品の寿命を削っていく。このあたりの“ロックのほどよい強さ”がおもしろさを長期にわたってキープするポイントになっているのは間違いない。

 そして、もうひとつは人間の描き方も“ほどよい”こと。登場人物は、愛情や憎悪、あるいは冷酷さや残酷さといった読者が共有や想像できる感情を実に素直に表現する。心理のひだを緻密に描きこんだり、客観的に引いた目で皮肉な眼差しを投げかけたりもしない。作者の聖悠紀は、顕微鏡でも望遠鏡でもなく、標準レンズの距離でキャラクターと向き合っているのだ。インナースペースを深掘りし文学方面にも傾かず、遠くアウタースペースに魅せられて“世界”そのものを問題にすることもない、このほどよい奥行き感も、作品を長続きさせている理由のひとつといえる。

『超人ロック』という作品のおもしろさは、「超(超能力)」のほうにあると思われがちだ(いや、そちらも「光の剣」とか「鏡」とかケレン味のあるアイデア満載でおもしろいのだが)。だが、こうして考えると、むしろ「人」のほうに軸足があることをずっと忘れていない、ということが、この長期連載にとって、大きな意味を持っていることが見えてくる。こうしたスタンスで人間を描き、着々と巻を重ねてきた聖の創作姿勢は、案外、横山光輝にも通じる部分があるのではないだろうか。「“標準レンズ”のマンガ史」とでもいうべき系譜がここにあるように思う。

浦島太郎状態のナーブは超能力者で軍人。

不意打ちで痛手を負うロック。

 <Profile>
藤津亮太
アニメ評論家。主な著書は『アニメ評論家宣言』(扶桑社)、『声優語』(一迅社)など。アニメなどのコラムを多数執筆。

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