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『銀河の死なない子供たちへ』上巻刊行記念! 施川ユウキ氏スペシャルインタビュー前編


施川ユウキ氏といえば、昨年アニメ化もされた読書あるあるコメディ漫画『バーナード嬢曰く。』を描く一方で、2013年にコミックス刊行の『オンノジ』、2016年刊行の『ヨルとネル』で、終末的世界を舞台にした深いストーリー性のある4コマ漫画の描き手としても知られる。その施川氏が、満を持して自身初の本格的なストーリー漫画に挑んだのが本作『銀河の死なない子供たちへ』だ。
本作はその壮大なスケール感と謎に満ちたストーリーが、発売後すぐにSNSを中心に熱狂的な感想とともに話題となっている。今回のインタビューでは、本作が生まれたバックストーリーや、施川氏の漫画に対する考えを、前後編に分けて語ってもらった。
 



■作者プロフィール
施川ユウキ(しかわ ゆうき)
代表作『サナギさん』『バーナード嬢曰く。』『鬱ごはん』『オンノジ』など多数。2014年に『オンノジ』『鬱ごはん』『バーナード嬢曰く。』の3作で、第18回手塚治虫文化賞・短編賞を受賞。2016年10月には読書あるあるが共感と笑いを読んだ『バーナード嬢曰く。』がアニメ化される。
ツイッターアカウント:https://twitter.com/ramuniikun

――『銀河の死なない子供たち』を執筆した経緯を教えてください。

施川ユウキ(以下「施」) 新作を始めようと編集者と話をしていて、カルト宗教団体の中で暮らす女の子達の話とか、藤子・F・不二雄先生の『21エモン』のようなドタバタトリオによる日常SFとか、色々アイデアが出ては消えていきました。とりあえず掲載媒体がWEB媒体なので、縦スクロールしながらサクサク読める漫画を描きたいという方向性が決まりました。あと、「すごい女の子」が描きたいというか…自然児っぽい?『崖の上のポニョ』のポニョみたいな。ラップをするのは、当時「フリースタイルダンジョン」が好きだったからです。自分自身リリック書くのは下手なんですけど、π(以下パイ)のキャラ的に稚拙さが丁度いいかなと思いまして。やたら擬音を多用したり。

不死の主人公パイが過ごす途方も無い時間経過が、最小限のコマ数で効果的に描かれる。
 

パイは身の上に起こったことを、ラップに乗せて披露する。

――本作の仮タイトルが『マザー』だったと聞きました。

施 今までの僕の漫画では、特別な二人による一対一の関係について割と描いてきたと思います。『バーナード嬢曰く。』ではド嬢と神林のような女の子同士、『オンノジ』では女の子と何故かフラミンゴになった男の子、『ヨルとネル』では男の子同士のバディ(相棒)もの。…で、やっていないのが親子関係だったっていう。最初の段階ではパイとママだけで、マッキはいませんでした。

――作品軸が、母親(ママ)と娘(パイ)の関係だったんですね。そこから生まれたのが『マザー』という仮タイトル。

施 『マザー』って、タイトル的にハッタリが効いてる感じがしないですか? 「何やらテーマ性の強いヤツ来たぞ…!」みたいな。マザー=母親という存在に関しては『もずく、ウォーキング!』『12月生まれの少年』『森のテグー』などでも描いてきました。それらで共通していたのは、少し達観した浮世離れしたキャラクターだと思います。個人的に、僕が母親はこうあって欲しいみたいな願望が入っているかもしれないです。おっとりしていて、なんでもにこにこ受け入れてくれるような。テグーの母親はちょっとうるさ型でしたが、基本的にヒステリックだったり、ガミガミ言ったりする母親像があまり好きではないので。

――それこそ、母なる海のような?

施 そうですね、あくまでフィクションなので。本作のママは、神話的というかグレイトマザーというか、より非現実的な存在です。それこそポニョの母親グランマンマーレに近いかもしれません。

ママの初登場シーン。

――今回の作品では「不死」が非常に重要なテーマになっています。なぜ不死の存在を描こうと思ったのですか?

施 やはり、キッカケは手塚治虫先生の『火の鳥 未来編』が非常に面白かったからです。

――争いによって人類が滅亡した地球に残された主人公が、不死の命を持て余しながらも独りで永遠を生き続ける中、人類にとって代わるような生命体が登場し、彼らがまた争いを起こして滅びていくっていう話ですよね。

施 『火の鳥』の中で漫画的に最も好きなのは鳳凰編ですが、設定的には未来編が一番グッときます。不死や永遠を日常化した時に生じる感情は、一体どういうものなのだろうとか、なかなか想像つかない。逆に言うと『銀河の死なない~』は、未来編以外の『火の鳥』とはあんまり関係ないと思います。

第一話で、弟のマッキが読んでいるのは『火の鳥 未来編』。

――次に、施川さんは1999年の『がんばれ酢めし疑獄!!』でのデビュー以来、一貫して漫画形式としては4コマやショートを描いてきましたが、本作ではコマ割り形式のストーリー漫画に挑戦されています。その形式を選んだ理由をお聞かせください。

施 なるべくセリフを削ぎ落としてサクサク読める漫画に挑戦してみたかったっていうのがあります。漫画を読んでいる時、1ページあたりの滞留時間が長いのって、気持ちよくないんですよね。サービスのつもりでネタをページに詰め込んだりするけど、それって読者の時間を無駄に奪っているだけかもしれない。それにはたと気づいたのは、セリフ中心に考える不条理ギャグや大喜利系ギャグを描いていた時だと思います。「必ずオチをつけたり、ネタを詰め込んだりするギャグ漫画を描いているけど、自分がそういう漫画を読む場合あんまり楽しんでないぞ…」って。ストイックな「ザ・ギャグ漫画」を読むのって、お勉強みたいな感じがするんです。職業病的なところもありますが、似たようなことを感じてる読者もいるかもしれない。それって漫画を楽しむことから遠ざかってるんじゃないかと。

パイが動物や自然現象と戯れる姿が、ダイナミックなコマ割りで描かれる。

――過去に自身が描いてきた漫画と、今のご自身の好みは違うんですね。

施 元々怠惰な人間なんです。ダラダラと日常系漫画を読むのが好きだし、小説でも漫画でも「お勉強感」があると、読むのを後回しにしがちだし。若い時はストイックなふりをしていましたが、結局は猫動画見てにゃーにゃー喜ぶような大衆の一人なんです。そもそも『バーナード嬢曰く。』と『鬱ごはん』は、それがそのままテーマになってますよね。…もはや作品履歴が怠惰な自分を受け入れる過程になっている気すらします。

――ご自身を見つめた結果、読みやすい漫画に辿りついたと。

施 怠惰=読みやすいっていうのは極論ですが、伸び伸びと描くようにはなりました。それに、よく漫画ってキャラクターが命って言いますが、ここ数年改めてその通りだなって。漫画を読んでいて面白いって思った時、その手柄がキャラクターの手柄なのか、作者自身の手柄なのかっていうことを考えた結果、できるだけキャラクターの手柄になるようにしたいと思うようになりました。自分の作家性を抑えようとかは思いませんが、本作でもなるべくキャラクターに引っ張っていってもらおうと試みています。たぶん一冊最後まで一気に読めるくらい、読みやすくなっているのではないでしょうか。
 

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