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『銀河の死なない子供たちへ』上巻刊行記念! 施川ユウキ氏スペシャルインタビュー後編


最新作『銀河の死なない子供たちへ』で「不死」をテーマにした理由や、主人公たちのキャラクターメイキングなどについて語ってくれた前編に続き、後編では作品世界と創作姿勢についてより突っ込んで聞いてみました。
 



■作者プロフィール
施川ユウキ(しかわ ゆうき)
代表作『サナギさん』『バーナード嬢曰く。』『鬱ごはん』『オンノジ』など多数。2014年に『オンノジ』『鬱ごはん』『バーナード嬢曰く。』の3作で、第18回手塚治虫文化賞・短編賞を受賞。2016年10月には読書あるあるが共感と笑いを読んだ『バーナード嬢曰く。』がアニメ化される。
ツイッターアカウント:https://twitter.com/ramuniikun

――『銀河の死なない子供たちへ』は作中で、宮崎賢治の詩『星めぐりの歌』から『Amazing Grace』、『ロミオとジュリエット』などの過去の芸術作品が登場します。創作において過去作品を参照することを、施川さんはどのようにお考えですか?

施 この漫画に関しては、文明の名残りみたいなものが断片的に出てきてるイメージですね。人類は滅んでも詩は残る…みたいな。あと、それらを出すことで、自ずと舞台が地球であり未来であることがわかるっていうのもあると思います。元々、引用とかカッコイイと思ってるので、割としがちですが。

第一話のラストシーンでは、新約聖書の言葉が引用される。

――これまで施川さんはご自身の作品の中で、言葉遊びや、大喜利的なことを描いてきましたね。

施 単純に言葉遊びが好きなんです。ただ、キャラクターにそういうのを言わせても、キャラクター性となかなか結び付けられなくて、最近は頻度が減りました。キャラが言ってるというより、作者が言わせてるみたいな印象になってしまって、それがノイズっぽく感じるというか…結局キャラの内面と関係なければ単にうまい事言っても、読んだ後に何も残らないんですよ。

――その瞬間は面白いと感じるのですが。

施 シチュエーション次第じゃないですかね。作者のドヤ顔が透けて見えないような使い方って結構難しいと思います。自重しててもついつい漏れ出てしまうくらいが丁度いい気がします。

――この作品では、「生」と「性」と「死」が直接的に描かれています。それらは、施川さんの死生観を反映しているのでしょうか?

施 そんなカッコイイものは無いですけど、生き死にを目の当たりにしたパイやマッキを描くことで、自分の死生観みたいなものは見えてくるかもしれないです。そのために、登場する動物などには生まれてもらったり、死んでもらったり、交尾してもらったりしているわけです。
 

パイはペット禁止のルールを冒し、初めて愛するものの死に直面する。

――今回も、前作の『オンノジ』『ヨルとネル』に続き、主人公たち以外の他者が不在であったり、あまり他者の存在を感じさせない世界を舞台にしています。その理由を教えてください。

施 それは、僕が社会というものから目を背けていたいという願望の現れなのでは……。

――施川さんにとっての社会とは?

施 改めて訊かれると難しいですが、たくさんの人間の集まり?

――施川さんは人間嫌いってことですか? 人とのコミュニケーションがめんどくさいということですか?

施 『鬱ごはん』なんかでモロに出てますが、苦手だし面倒ですよ。でもそういう話って、「人見知り」とか「コミュ障」とか「ぼっち」とかの言葉で一般化して大量消費されてる感ないですか? 今更語ることがないというか。

――『オンノジ』や『ヨルとネル』を読んでみると、一対一の関係性については、とても大事されている気がします。人間嫌いであっても、やはりどこかで誰かと繋がっていたいっていう想いの現れなのでしょうか?

施 人間嫌いといいつつも、自分をわかってくれる誰かに寄り添ってほしいっていう、よくあるやつです。それでいて時々孤独もほしい。孤独だけの『鬱ごはん』なんかがベターで、『オンノジ』とか『ヨルとネル』がベスト…単にそういうことなのかもしれないです。都合のいい世界観ですけど、フィクションなんだからそれでもいいとは思ってます。『バーナード嬢曰く。』の舞台である図書室も本当に気に入った人間しかいませんから。

――心地いい世界ですよね。

施 現実の現実感が圧倒的だから、現実逃避を楽しめるんですよ。現実の現実感…揺るぎないですよね。

――翻って『銀河の死なない子供たちへ』のことを考えてみると、テーマである「不死」は非リアリティなことですが、パイとマッキは結構リアルな現実に遭遇していますね。弱肉強食の世界で生き物が生殖行為をして子が生まれたり、そして時に死んでいく野生世界の現実に。

施 パイもマッキも悩まなきゃいいのにって思うことがあります。ありのままを受け入れて、楽しく生きていけばいいのにって。でも何万年も生きたとしたら、苦悩や孤独に立ち向かうこともある種のレジャーなのかもと思うんですよ。楽しいことってツライことより刺激が少ないので、もしかしたら飽きるのかもしれない。他人のいない世界で楽しくのほほんと生きるっていうのは、素朴な願望としてありますが、パイとマッキはそれに飽きたのかもしれない。

姉のパイより冷静沈着な弟マッキは、人類への強い関心を寄せる。

――だからペットを飼ってはいけないという禁忌もおこすし、人間探しをしてみようとするのですね。本作は、それまで不死によるある種の平穏な日常に閉じこもっていた姉弟が、そこから脱却しようとする話でもあり、それは施川ユウキという人間にとってもひとつの挑戦だったのでしょうか。

施 そう言われるとそんな気もしてきますが、割とチャレンジングなことはこれまでもやっているつもりなので、そういう意味では今まで通りです。今作の場合、ストーリー物っていうのも初ですが、全ページ断ち切りだったり、トーンじゃなくてグレースケールで塗ったり、そっちの方も初めてなので結構手こずったりもしています。

――最後に、今後の本作への意気込みを教えてください。

施 後半は自分でもまだ見えてない部分がありますが、何とか頑張ります。連載を楽しんでくれている人は是非単行本でも読んでみてください。連載時とは印象が変わると思います。描き下ろしたページを差し込んだり、π編とミラ編に分けたことで物語の理解の仕方も変わってくると思います。

――今日はありがとうございました。

 

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