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【第6回】藤津亮太 漫画試し読み放浪記




新作・旧作、注目作に話題作。いろいろ気になるあの作品を、ちょっとだけ試し読み。そんな調子でマンガの世界を放浪していきます。
【第6回】 盾の勇者の成り上がり

 2012年から小説投稿サイト「小説家になろう」で連載中の原作(アネコユサギ、イラスト:弥南せいら)を、藍屋球がコミカライズしたのが本作。

 異世界に召喚された大学生の岩谷尚文は、同じく召喚された3人とともに“勇者”としてその世界を守ることを命じられる。ほかの3人はそれぞれ剣、弓、槍を手にしていたが、尚文の“武器”は、攻撃力のない盾。さらに勇者に同行を希望する者も、尚文だけゼロ。
 そんな尚文に国王は「盾の勇者に人望がないせいであろう…」と言い放ち、さらにほかの勇者の、盾は負け組の職業という言葉が追い打ちをかける。異世界に召喚されたばかりなのに尚文を襲うこの仕打ち。さらに尚文はレイプの濡れ衣まで着せられてしまう。
 どん底まで落ちた尚文は、レベルアップのための旅に出る。途中、攻撃力を補うため亜人の奴隷ラフタリアを買い、2人の旅を始めるのだった。

 以上、あらすじを書いてみたが、これがおよそ1巻の半ばまで。つまり物語の冒頭から、尚文は不条理なまでに貶められているのだ。そしてそこからの逆転劇(ちなみにいま説明した状況からの最初の逆転が訪れるのは2巻のクライマックス)。これはつまり、異世界の『半沢直樹』なのだ。

『半沢直樹』は2014年から放送されたドラマ。上司のミスや不正で陥れられた銀行員の主人公が、「やられたらやり返す」の信条で逆境を跳ね飛ばしていく様子が人気を集め、「倍返しだ」のセリフは流行語にもなった。

 特にストーリーや描写に似ているところがあるわけではない。優しいはずの主人公が、不条理なまでに追い込まれ逆転するカタルシス。その構造に共通点があるのだ。この構造をきっちり描いているからこそ、本作は人気作なのだと思う。
 
 2巻のクライマックスで描かれるのは、槍の勇者との決闘。「これが本当に最強の矛と盾の戦いであるなら/俺の盾を貫けなかった時点でお前の負けなんだよ!」という尚文の啖呵の切れ味。そして、卑怯な手で追い詰められた時の「ここは地獄だ/すべてが俺を惑わせ…/――貶める」という絶望。そして、その時、ラフタリアがとった行動でもたらされる本当のカタルシス。この振幅の大きさが本作の読みどころなのだ。
盾の勇者であることで、周りから疎まれさげすまれる主人公・尚文。自分を取り巻く雰囲気に徐々に気づき…。

信頼していた仲間に裏切られ、強姦魔にされてしまう。どん底からの成り上がりを期待して読み進めよう。

 <Profile>
藤津亮太
アニメ評論家。主な著書は『アニメ評論家宣言』(扶桑社)、『声優語』(一迅社)など。アニメなどのコラムを多数執筆。






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