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【第7回】藤津亮太 漫画試し読み放浪記




新作・旧作、注目作に話題作。いろいろ気になるあの作品を、ちょっとだけ試し読み。そんな調子でマンガの世界を放浪していきます。
【第7回】 あの娘にキスと白百合を

 どうして人を好きになってしまうんだろう。本作にはそんなキラキラした思いが詰まっている。
 
 今回、試し読みに選んだ『あの娘にキスと白百合を』は、そんな作品だ。

 舞台は女子校の清蘭学園。成績優秀で立ち居振る舞いも上品な白峰あやかは「清蘭の鑑」とみんなから慕われている。そんな彼女が高等部に進学して出会ったのが、黒沢ゆりね。黒沢ゆりねは、普段はやる気がなさそうに見えるが、成績も運動も抜群で「天才」と呼ばれていた。
 努力することで「清蘭の鑑」として振る舞っているあやかは、そんなゆりねにまったく勝つことができない。悔しすぎるあやかは、だんだんゆりねを意識していくが、マイペースなゆりねに翻弄されてばかり。

 そしてテストの成績をめぐって怒ったあやかは「貴女なんてちょっと要領がいいだけの ただの人だってことをわからせてあげるわ!!」と怒鳴りつけてしまう。ゆりねは、そんなあやかを見てキスしてしまう。

 物語はあやかとゆりねを縦糸に、清蘭学園の女の子たちのさまざまな「好き」に揺れる姿を描いていく。ささいな出来事に一喜一憂する彼女たちの表情が実に魅力的だ。。
 登場する女の子たちは、あやかをはじめ、みな自分の気持に振り回され、戸惑い、時にそれは怒りとして表現されたりする。どうしてそんなの心が乱れるのか。それは最初に書いたとおり、「どうして人を好きになってしまったのか」それが自分ではうまく説明ができないからだ。

 当たり前のことだけれど、その人を好きな理由は自分の中にはない。それは相手の中にあるものなのだ。だからひとりで悩んでいても答えはでてこない。でも、その人を目の前にした瞬間にわかるものなのだ。だから、本作の各エピソードの多くは、直接対面したふたりのやりとりで締めくくられる。たとえば、ゆりねがあやかにキスしてしまった理由もちゃんと描かれる。

 本作では陸上部員とマネージャー、天文部の先輩と後輩……といった、人間関係と思いを連鎖させながら、青春の風景が描かれていく。いろんなキャラクターの「好き」が詰まった本作を読むと、まるで金平糖の瓶をながめているような素敵な気持ちになる。

最初は優等生風を吹かせていた あやか だったが…。

結局は、天然で天才肌の ゆりね に振り回されてしまう。

 <Profile>
藤津亮太
アニメ評論家。主な著書は『アニメ評論家宣言』(扶桑社)、『声優語』(一迅社)など。アニメなどのコラムを多数執筆。







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