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【第8回】藤津亮太 漫画試し読み放浪記




新作・旧作、注目作に話題作。いろいろ気になるあの作品を、ちょっとだけ試し読み。そんな調子でマンガの世界を放浪していきます。
【第8回】 日本の歴史 別巻 よくわかる近現代史

「教養」というと何か難しい感じもするが、あれはつまり「土地鑑」のようなものだと思う。行ったことのある土地、住んだことのある土地ならば、どこに何があるか分かっていること。決して精通している必要はない。ポイントになる目印、ランドマークをわかってさえいれば、迷子にならず歩き回ることができる。こんなふうに「迷子にならずに、だいたいわかる」範囲が広いことが、「教養がある」という状態なんだろう。

 この土地鑑を養うのに、特に大事なのが歴史だ。歴史は「我々や我々の社会は、なぜこのような形になったのか」を知るためのもの。だから、歴史を知るということは、現在――現代ではなく――を見通すための、見取り図を手に入れることにほかならない。

『日本の歴史別巻 よくわかる近現代史』全3巻は、大正時代から現代に至る日本のあゆみを漫画でまとめたシリーズだ。架空の外交官・山田新次郎の一家を狂言回しにして、読者は激動の時代を読み進めることになる。

 目次の部分に「保護者の方へ」の欄があることからもわかるように、本書は主に小・中学生を想定したシリーズだ。でも、これは大人が読んでも役に立つ。そもそも本書にコンパクトにまとめられた内容を、どれほどの大人が「見取り図」として使えるほとに覚えているだろうか。

 たとえば美濃部達吉の天皇機関説。これが唱えられたのが1923年。この学説は政府公認だったが、国家主義者の攻撃により1935年には政府からも否定され、美濃部達吉の著作は発禁になってしまう。この間、わずかに12年。この短い間に日本で何が起きたのか。本書はこのふたつの出来事の間に140ページほどを費やしているが、本書の1巻の中核はこの12年の間の変化にあるといってよい。それを端的に説明できる大人はどれほどいるだろうか。

 本書を読んで、断片化している自分の記憶や知識を点検すれば、これまでよりもずっとはっきりと物事が見通せるようになるはずだ。

「学習まんが」といって侮るながれ。コンパクトにまとめられた「まんが」だからこそ、取り回しがいいのだ。これほど手軽に教養を深められる本もなかなかない。

 
日本のみならず、世界情勢もふまえて展開していく。

文化面での流れも掲載されており、子供も大人も読みやすい内容に。

 <Profile>
藤津亮太
アニメ評論家。主な著書は『アニメ評論家宣言』(扶桑社)、『声優語』(一迅社)など。アニメなどのコラムを多数執筆。








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