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クズ青年とアンドロイドの同居生活『ブキミの谷のロボ子さん』1巻レビュー!


人とうまく接することができず、一人の人生を過ごしてきた28歳自由業の上小杉惣介。そんな上小杉のもとに現れたアンドロイドは人間とはなにかを上小杉に問うが、「そんなことわかるわけがない!」 人のクズと呼ばれた男とアンドロイドの少女が人間とは何かを探る『ブキミの谷のロボ子さん』。待望の1巻発売を記念して、作品の見所を紹介する!
 
『ブキミの谷のロボ子さん』①
2018年5月26日発売


 
「不気味の谷」という言葉をご存知だろうか。



不気味の谷とは、ロボット工学などで知られる心理現象である。

人間ならざるものの外見を徐々に人間に似せていくと、人の好感度はどんどん増していき、まさに人間という時に好感度のピークを迎えるのだが、そのピーク直前に、人間らしい(けど違う)というところでストンと一気に嫌悪感に転じてしまうことを指す。どんなに人間に似せようとしても、目の感じ、肌の質感、呼吸の様子など、完全に人間と同じロボットを作ることはできず、逆に近づけようとすればするほど、些細な違いに違和感を抱き、不気味に感じてしまうジレンマが潜んでいるのだ。


▲外見が人間そっくりだからこそ、まばたきの有無が気になる!

さて、この『ブキミの谷のロボ子さん』の世界に登場するのは、女子中学生そっくりに作られたアンドロイド「ロボ子さん」。見た目は完全に不気味の谷を越えて人間そのもの(黒髪!ロング!超美人!)で、能力は谷どころか超人レベル。しかし、すでに人間を超えてしまっているにもかかわらず、彼女の目的は「人間とは何かを教えて欲しい」というもの。そんなロボ子さんが、人間でありながら人の心がわからないことがコンプレックスの上小杉惣介(28歳自由人)のもとへ届けられるところから物語が始まる。
 
▲巨大なダンボールから姿を現わしたのは、少女の姿をしたアンドロイド。

▲少女の言葉が、人の心がわからない上小杉に突き刺さる。

人間を超越したロボ子さんの姿には、義手や義足の選手がオリンピック選手の記録を超えたり、人工知能が将棋やチェス、囲碁のトッププレイヤーを打ち破ってきたりしてきた姿を彷彿とさせる。


▲超人的な身体能力で、バスに轢かれそうになる上小杉を救出!


▲扉を蹴破り華麗に参上。修理費は誰が払うんだ……。

今の時代だからこそ、その超人的なアンドロイドにもささやかなリアリティを感じるのではないか。外見を極限まで人間に似せ、ロボットが出せる能力をそのまま削がずに与えると、ロボ子さんのようになるのだろう。彼女が主人公と共に人間に近づいて行ったとき、不気味の谷はやってくるのだろうか。二人の関係はすでに谷底だが、この谷をどう超えてくるのか、気になるところは多い。


▲様々なことに興味を示すロボ子に振り回されっぱなし。


▲ロボ子を都合よく使おうとしても、話が噛み合わない…!

▲CMに感化され「夏の服」を探すロボ子。いいのか、それで。

似て非なるものとして地球と他の惑星の話をするが、天文学ではここ数十年の間に観測技術が劇的に発達して、太陽系以外の惑星(地球に似た星)がたくさん見つかるようになってきた。しかし、一番近い惑星でも何光年も離れていて、現在の技術では行くだけでとんでもない年月が必要になる。行けるわけではないのに、なぜ他の惑星を探すのか。この問いの答えを、あるプラネタリウムの番組では「地球を知るため」としていた。似ているものと比較して異なる部分から本質を探る、ロボ子さんの「人間を知るため」という目的も同じなのではないだろうか。人間そっくりのアンドロイドが、人間とは何かを知るために、人間らしさを失った人間と生活をする。「人間を知るため」には、とても面白い組み合わせである。



▲幼いときから人の心がわからなかった上小杉が、ロボ子との出会いで得るものは──?

なお、作者の伊咲ウタさんは、初連載作品である「サヤビト」(全8巻)でも、サヤビトという、見た目も、考えることも、食べ物も全く人間と同じにもかかわらず、主人の命令に逆らえないように造られた存在をテーマとし、「サヤビトとは何か」に迫っていく剣と絆の物語を書ききっており、今作でもその本質に迫っていく展開に期待せざるをえない。
 
■プロフィール
まなめ
かりすまにゅーすさいと管理人。個人サイト「まなめはうす」を1996年に開設し、ニュースの紹介や駄文を綴っている。好きな飲み物はコカコーラ。弱点は大量のコカコーラ。

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