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【第14回】藤津亮太 漫画試し読み放浪記




新作・旧作、注目作に話題作。いろいろ気になるあの作品を、ちょっとだけ試し読み。そんな調子でマンガの世界を放浪していきます。
【第14回】 剣姫、咲く


 戦国時代に袋竹刀が考案され、江戸時代初期に入り防具が発案される。そして江戸後期になると北辰一刀流の創始者、千葉周作が竹刀稽古の方法論を整える。ここを遠い源流として、現代の剣道が生まれることになった。

 『剣姫、咲く』のおもしろいところは、スポーツとなった現代の剣道を題材にしつつも、「斬った/斬られた」というスポーツ以前の剣豪たちの世界へと、ケレン味たっぷりに読者を誘うところにある。
 鶴城高校剣道部に入部した1年生、草薙諸葉の前に、圧倒的な実力を持つ少女・戸狩姫咲が現れる。戸狩姫咲こそ、中学時代に圧倒的強さを見せつけ、彼女を倒そうとしたさまざまな剣道少女たちを開花させた存在だった。それゆえに彼女は「開闢の剣姫」と呼ばれた。中学以来、表に出ることがなかった戸狩が動き始めたことをきっかけに、剣征館学園の“紅熾の剣姫”こと火之浦紅緒、金刀比羅女学院の“静雲の剣姫”こと雲居浮羽々といった剣姫たちもまた動き出す。まさに群雄割拠といった趣だ。

 しかし、そんな剣姫たちに囲まれた主人公・諸葉は剣姫ではない。彼女の武器は“目”のよさ。仕掛けようとする相手の動きを見抜いて先をとる“先の先”を得意とするが、剣姫たちの壁はなお高い。この気弱に見えて譲れない一線を持つ草薙諸葉と、天真爛漫で傍若無人な天才の戸狩姫咲が、両輪となって物語を動かしていく。

 本作の読みどころは、ケレン味重視で演出されながらも、剣道の技術的なポイントもしっかりフォローしているところ。たとえば第1巻で描かれる火之浦紅緒と戸狩姫咲の勝負。火之浦紅緒の構え方に対する解説が逐一入ることで、紅緒の勝負に対する姿勢が具体的に見えるようになっている。それ以外にも、各キャラクターがなぜ強いのかを、趣向を凝らして理屈付をしている。

 勝つか負けるか。誰が誰より強いのか。それを決めるための一対一の勝負。だからこそ、多彩なライバルたちが一層際立つ。そのシンプルな設えが本作の魅力だ。

 
圧倒的な実力を持つ少女・戸狩姫咲。反応速度も足捌きも群を抜いている。
 

“目”のよさを武器とする諸葉は、姫咲の動きを見抜いていく。

 <Profile>
藤津亮太
アニメ評論家。主な著書は『アニメ評論家宣言』(扶桑社)、『声優語』(一迅社)など。アニメなどのコラムを多数執筆。














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