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いか文庫のマンガ通への道  第15回



~いか文庫の2人[店主]と[バイトちゃん]による、おすすめマンガの往復書簡~
 
いか文庫のマンガ通への道 第15回
『どこか遠くの話をしよう』

私がいつか行ってみたい場所のひとつに「南米」があるのだけど、今回おすすめする漫画は、その南米(おそらくペルーあたりかな?)にある小さな村が舞台の物語です。
 
ちなみになんで南米が気になるか?と言うと、民族衣装がかわいいからなの。この『どこか遠くの話をしよう』の表紙には、カラフルで特徴的な柄の民族衣装を着た女の子が立っていて、大きな目でこちらをじっと見つめています。それでとても気になったんだよね。
 
”物”に触ることで、その”物”の声が聞こえる少女「チロ」が、この物語の主人公です。訳あって両親が居なくて、おばあちゃんと二人で暮らしているのだけど、そのおばあちゃんもとある事情で声が出ません。だから、身の回りにある”物”とおしゃべりすることで、おばあちゃんが感じていることを知って、コミュニケーションを取っているの。
 
その2人が住む家の納屋に、ある日突然、見知らぬ男性が出没します。いつ、どこから、どうやって来たか全くわからない、人種も、話す言葉も違う男性です。言葉が通じないから、ここでもまたチロが、その男性の持ち物に触れて声を聞き、ちょっとずつ理解しあって行くんだ。そしてその男性が何者なのか?そしてなぜここに居るのか?も、ちょっとずつわかっていくんだけど、それがまた単純な理由じゃなく、とても複雑に絡み合った背景があって……と、ネタバレになっちゃうから、続きはぜひ読んでみてね。
 
私がこの漫画でとても心に沁みたのは、チロが住む小さな集落の人々のことです。小さいからそれぞれのことが筒抜けではあるんだけど、だからこそ皆がみんな家族みたいに全員で助け合って日々の生活を営んでいるんだよね。それが、今私が生活している環境とはかけ離れていて、でも心のどこかで羨ましく思っている風景だから、自分もチロを見守る村民の一員になったような気持ちになりました。
 
しかもこの漫画を読んだタイミングで最近、実家に帰る機会があったので、より一層じっくり、そしてじんわりと、家族や親戚への気持ちを再確認したんだ。バイトちゃんはどう感じるかなぁ…。 お返事、楽しみに待ってます!
『どこか遠くの話をしよう』、読みました!
澄み渡る昼間の空に、夜の星空、緑広がる大地…舞台になっている南米あたりの村、いいですねぇ。私もいつかたっぷり時間をかけて旅してみたいと思っていた地域なので、より一層その気持ちが強くなりました。
  
“人の心が読める主人公”が登場する作品は思い当たるものが何冊かあるのですが、“物の心が読める主人公”というのは初めて出会いました。言葉が通じない男性の心を知るために、男性の持ち物に触れ、手がかりを見つけていくストーリー展開、おもしろかったです。なんでもかんでも持ち物に手を触れればいいってわけでもなく…。その能力を手にしてみたいけど、合理的な私には無理かな?と、考えてしまいました。
  
店主が心に沁みたという、集落の人々のシーンもいいですよね。私はいま実家の新潟に帰ってきて生活をしているじゃないですか? 田舎だからか、昔から町内の付き合いが盛んで。季節ごとに大きな宴会があるし、父はしょっちゅう近所の人たちと集会所でお酒を飲んでいるんですよ。新潟は雪がたくさん降るので、雪が積もったら皆で近所のお年寄りの家にスコップを持って雪かきに駆けつけることも!都会のマンション暮らしでは、想像ができないですよね。漫画の中の村人たちほどの親密度ではないですが、地域の人と協力して…という点は、この漫画と私が住んでいる地域は一緒だなぁと感じました。
 
そうそう、私は普段から人の手をよく見てしまうんですけど、この漫画は手のカットが多いのが印象的でした。主人公「チロ」が物に触れることで会話ができるというのもあるし、話すことができないおばあちゃんも、言葉が通じない男性も、表情と手で何かを伝えようとしていますよね。男性の指先から優しい人柄が表れていて、じーんとするシーンがありました。
 
物語の内容はもちろん、指先から民族衣装、大自然といったイラストまで、とにかく隅々まで美しくて、読んでいくうちに心が澄んでいくような…。ちょっと忙しくて余裕がない人は、この漫画を読んだら心がほぐれるかも?私も友達にすすめたい一冊になりました。おすすめ、ありがとうございました!


チロは、“物”に触ることで、その“物”の声を聞くことができる。

プラティーノという名づけられた見知らぬ男性は、チロのがんばりもあって、徐々に集落の人々に馴染んでいく。
 

いか文庫 Profile
お店も商店も持たない「エア本屋」。本屋さんと組んでフェアを展開するなど、本に関わる分野で活動する【店主】と【バイトちゃん】2人組。このコラムは、2人の薦め合いで構成。















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