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後悔や炎上の中から生まれた感動作「祖母の髪を切った日」。「しかばね先生」にインタビュー!



「クラスに必ず一人はいた、汚い子ども。それが私だった」。ド貧乏だった子ども時代。だけど、優しくて凛とした祖母が、いつもそばにいてくれた。その祖母がやがて認知症になり、介護をすることになった時、孫の心に募るのは――。ふと思い出す、あの頃のこと。介護がままならない苛立ち。目を背けてきた、後ろめたい気持ち。
ツイッターほかで話題になった「しかばね先生」の漫画エッセイが、全面改稿されて刊行。きれいごと一切なしで綴った、感動の≪心の介護≫コミック!

『祖母の髪を切った日』





認知症の祖母との暮らしを描いた『祖母の髪を切った日』が発売中の「しかばね先生」。本作は、貧しかった子ども時代の思い出、祖母の認知症発症と介護生活を振り返って、その時々に感じた本音を綴ったエッセイコミックです。『祖母の髪を切った日』が一冊にまとまった今、しかばね先生が思うこととは?

実は、単行本の中だけでは語り足りなかったことや、作品にまつわる思い出はたくさんあります。

その一つは「育ての親が亡くなると、こんなにもずっと悲しいのか」という単純な事実です。10代の頃、初めて恋愛をして、もう初めての恋愛だから脳がバカになっていて、このままずっと一緒にいられたら幸せだな!と思っていたら、突然「他に好きな人ができた」という一言で全てが終わってしまった事がありました。初めての失恋だから前例がなくて、どうやって気持ちの処理をしていいか分からず「人生でこんなに悲しい事はない」とか思っていた頃があったのですが、あんなもん、親との別れを経験したらまるで比べ物になりません。

もう一つは、全く別の、ネットでの出来事です。祖母との最後の別れ、その別れから全てにおいて無気力となり、もしかしてこれは鬱病なんじゃないか?とネットで調べていたら某掲示板に辿り着きました。そこではいかに鬱で苦労したかが書き込んであって、その書き込みを読んでいたら得体の知れない怒りが湧き上がり、「おまえらは仕事とかイジメとかがきっかけで病んでるけど、それって逃げれば解決するじゃねーか!」、気がつくとそんな書き込みをいくつもしてしまいました。そうです、これは「私の方が貧乏な家庭で育って、しかも、その育ててもらったおばあちゃんが認知症になって、おまえらの何倍も苦労している! 逃げる事なんてできなかった!! なのに、いくつも逃げ道があったおまえらが病むなんておかしい! 私が一番可愛そうなんだよ!!」っていう、気色の悪いマウントだったのです。顔の見えない相手を口汚く罵って、自分のストレスを発散させて精神を安定させていたわけです。そのしっぺ返しを受けたのは、やはりネットの中でした。

『祖母の髪を切った日』は、ツイッターやブログ、介護情報サイトで発表した作品を一から描き直して収録しています。友達のおじいさんが亡くなった話を聞いた時の様子を、漫画にしてブログに載せた時のことです。



「なんだそれ!ウケる〜!!」と軽々しく笑った当時のあさはかな自分を隠さずに描いたところ、「人としてありえない」「この人のこの反応はおかしい」「こいつ大嫌い」「死ね」という批判が殺到しました。批判と言いましたが、それは私にとって全部正論に映りました。
一言一句、全て読みました。人の死を軽々しく笑っていたこと、それから祖母の変化に気づいていながら目をわざと背けていたこと。介護していた当時、このことを私の周りの人達は誰も責めはしてくれませんでした。ネットは匿名で、顔が見えないからこそ本心が言える場なので「ああ、やっと私が悪いってちゃんと言ってくれる人達がいた…」と、変な話ですが、安心している自分がいたのを覚えています。

様々な後悔や、時には失敗したりする中で生まれた『祖母の髪を切った日』。介護の経験がある方はもちろん、たくさんの人に読んでもらいたい作品です。


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