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【第16回】藤津亮太 漫画試し読み放浪記




新作・旧作、注目作に話題作。いろいろ気になるあの作品を、ちょっとだけ試し読み。そんな調子でマンガの世界を放浪していきます。
【第16回】 初情事まであと1時間


 うれしはずかし初情事。本書は様々なシチュエーションで、これから初情事を迎えようとする男女2人の“最後の1時間”を描くというコンセプトの作品だ。毎回異なるカップルが登場して、各巻10エピソードほどが収録されている。

 劇作家の木下順二は「劇的」ということについてその著書で考察している。その考えを要約すると、「劇的」とは「手を伸ばせば伸ばすほど、その対象が離れていってしまう状況」なのだという。初情事直前の1時間は、まさに脳内でこの劇的な状況が何度もシミュレーションで繰り返されている時間でもある。

 「相手を思う気持ちは十分にあふれている。でも、それをいきなりぶつけたら、もしかしたら相手はひいてしまうかもしれない」。「一線を越えたい気持ちはあるが、素の自分をさらけ出した時に残念に思われてしまうのではないか」。劇的な独り相撲を繰り広げながら心は千々に乱れ、時間は少しずつ経っていく。「石橋を叩いて渡らない」のか「見る前に跳べ」なのか……。

 本書に登場するシチュエーションは様々で、キャラクターの立場や気持ちも様々だ。だけれど、その根底には変わらず、劇的な葛藤が流れている。その独り相撲をちょっとだけ客観的に(コミカルに)描いているところが、読者の共感を呼ぶところだ。

 個人的におもしろかったのはCASE4「霞と晴樹の場合」。これは霞が、超アンラッキー体質で、つきあった彼氏が次々と不幸になってきたという設定で、晴樹と思いが通じて以降、どんどん“暗雲が垂れ込める”という展開。「手を伸ばせば離れていく」が「手を伸ばせば不幸になる」という形に変奏されていて、コント的にまとめられていた。

 もうひとつ本書の特徴は、5回に1回ぐらいのペースで、ファンタジーなど非現実的(?)なシチュエーションのエピソードも登場すること(たとえばCASE2ではダンジョンの中の魔法使いと勇者が描かれる)。でも時もところが変わっても、好きな相手を肌を交わしたいという思いは変わらないのだった。

 
うれしはずかし、ドキドキの瞬間


超アンラッキー体質の霞は、晴樹くんと付き合えるのか!?

 <Profile>
藤津亮太
アニメ評論家。主な著書は『アニメ評論家宣言』(扶桑社)、『声優語』(一迅社)など。アニメなどのコラムを多数執筆。
















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