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いか文庫のマンガ通への道  第17回



~いか文庫のメンバー4人による、おすすめマンガの往復書簡~
 
いか文庫のマンガ通への道 第17回
『異世界落語』

バイトもりもりへ
 
12月にバイトちゃんがベトナムに引っ越して、ベトナム支社ができましたね。ちょっと寂しくもあり、でも新しい場所でよりいっそうがんばってくれそうだから、楽しみでもあるね。
 
それにしてもベトナムって、どんな所なんだろう? 私は行ったことないから、日本でも食べられる生春巻きとか、フォーとか、食べ物のイメージしか無いんだけど……。生活するとなったら、異世界なんだろうねぇ。
 
あ、そうそう!「異世界で過ごす」といえば!最近読んだ漫画がまさにそういう話だったので紹介します。こちら『異世界落語』です。
 
この作品でいう「異世界」とは、人間、魔法使い、勇者、ドワーフ、ゴブリン、モンスター……などなど、現実には遭遇し得ない者たちが共存している場所のことです。その異世界に、ある日突然「ハナシカ(噺家)」がやってきます。やってくるというか、間違って異世界に召喚されてしまったのだけれど……。その噺家「一福(いっぷく)」が、異世界で落語を披露することから話は始まります。
 
でね、この一福がすごいのは、見たこともない生き物や食べ物、場所を目の当たりにしても動じることなく、むしろ楽しんでいることなんだ。しかも、それらを自分の落語に応用するの!例えば、かの有名な古典落語、屋台の蕎麦を食べて勘定をごまかす「時そば」。これを、異世界に来て初めて食べた「チンチローネ」という麺料理と、数字が使えない異世界特有の時間の言い方を使って、あれよあれよという間にアレンジしちゃう。そうすることで、異世界の住民たちをあっと驚かせて、笑わせて、楽しませちゃうの。そしてその落語の妙から、住民たちはいろんなことを学んでいって……残りはぜひ、読んでみてね!
 
と、ここまで書いておいてなんですが。バイトもりもりは落語を観たり聞いたりしたことある?私は寄席を観に行ったこともあるし、最近もテレビで落語番組を観てブームが再熱してるんだけど、実はこの漫画、一つのお話が完結するたびにとても分かりやすい解説も付いているから、まだ落語を知らなくてもぜひオススメしたい作品なの。異世界の住民と一緒に楽しんでもらって、お後がよろしくなりますように!

 
店主ー!バイトちゃんが旅立ってしまい、とても寂しいです。とても寂しいけど、バイトちゃんに追いつけるように私もがんばりますので、どうぞよろしくお願いします!
 
さて、店主おすすめの『異世界落語』読みましたよ!
正直なところ最初は、異世界と落語?!って思いました。どう組み合わさるんだろうって。
でも読んでいくうちに、たしかに異世界にすんなり対応しているところもあるけれど、一方で変わらず持ち続けている落語家としての一福の「らしさ」も残っているところがいいんだなあと思いました。それが、自分がどこにいても、どんな状況でも、「着物を着て落語するだけですけどね!」という一福のさりげないセリフに表れている気がして、落語家としてのゆるぎないプロ意識を感じて、不覚にもかっこいいじゃないか、と思ってしまいました。普段ニコニコとしている一福の目がフッと落語家の目になる瞬間が、どこか怖ろしくて、でもそれこそが一福の本当の姿であり、“力”なんだろうなあ、きっと。
 
店主からの質問の答えですが、恥ずかしながら私はこれまで落語を生で観たり聞いたりしたことがありません…。だから、噺の内容はもちろん、生の臨場感とか、惹き込まれる感じとか、それこそまだ体験したことのない“異世界”だと思います。(大袈裟でしょうか?)
でも、そんな私でも、一福が披露した「時そば」というお噺の異世界版への即興アレンジはすごい!と思いました。あれ?この単語、ちょっと前に見たな。ん?このくだり、さっきあった?と、ページを何回も戻ったりしながら確認するのも楽しくて。落語ってただ笑わせてくれるだけではなくて、観客が自分で続きやオチを考えながら観ているうちに、気づけばのめりこんでしまうのかなぁと思いました。生の落語、聞きたくなっちゃいました。
 
そして何より気になるのは、一福の「落語」が、さまざまな争いや問題が起こる異世界でどんなふうに効いてくるのか…です。これからの一福の活躍にも目が離せませんね!
異世界と落語というこの組み合わせ、いやあお見事!でした。


演芸場からあっという間に異世界に飛ばされてしまったハナシカは……。

食堂で小噺を披露するハナシカ。「時そば」ならぬ「時・チンチローネ」。
 

いか文庫 Profile
お店も商店も持たない「エア本屋」。本屋さんと組んでフェアを展開するなど、本に関わる分野で活動する【店主】と【バイトちゃん】2人組。今年からサブスタッフ【バイトもりもり】【バイトぱん】も加わって、本をお薦めするお手紙を、4人でやり取りしていきます。

















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