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【第17回】藤津亮太 漫画試し読み放浪記




新作・旧作、注目作に話題作。いろいろ気になるあの作品を、ちょっとだけ試し読み。そんな調子でマンガの世界を放浪していきます。
【第17回】 SSRのタマゴ

 「誰にでもできる仕事」というのは本当に「誰にでもできる仕事」なのだろうか。そもそも、世の中の大半の仕事はその人がいなくなっても誰かが代わりに立って進めてくれるわけで、不都合も多少は出るだろうが、「誰にでもできる」ことには変わりはない。

 大事なのは、「誰にでもできる仕事」だけれど、今そのバッターボックスに立っているのは自分しかいない、と考えること。そう考えれば「誰にでもできる仕事」でありながらも、同時に「自分の仕事」になっていく。

 『SSRのタマゴ』はそんな仕事と自分の関係を描いた作品だ。

 イラストレーターに憧れるはじめは、派遣社員として大手アプリ制作会社で働き始めた26歳。希望とは違う女性向けソーシャルゲーム「スイーツ♡らんでぶー」の部署に配属されたが、なかなか“乙女ちっく”なデザインを描くことができない。
 デザインも下手で、トレーニングも足りない新人のはじめに渡される仕事は、ラフの清書といった“簡単な仕事”。しかも派遣スタッフだから、3カ月に1回の契約更改でいつクビになってもおかしくない身分だ。まさにはじめは「誰にもできる仕事」を働く、ごく普通の人間なのだ。

 やる気が空回りしがちなはじめだが、「誰にもできる仕事」で失敗を繰り返しながら、一歩ずつ成長していく。はじめがぶつかった壁とそれを乗り越える方法が具体的に描かれており、それはそのまま「誰にもできる仕事」を「自分の仕事」にしていく過程になっている。

 いわゆる“お仕事マンガ”は、まず題材となった業界の裏側を覗き見る社会科見学的なおもしろさがある。本作でも、戯画化はされているものの、ユーザー数の確保とアイテム課金をめぐるソシャゲ業界の裏側を垣間見ることができる。
 そして“お仕事マンガ”のもうひとつのおもしろさは、仕事と人間の関係を読むところにある。「使命」なのか「憧れ」なのか、それとも「金」なのか。

 本作の場合は、はじめの「憧れ」がすべての始まり。その、はじめがどんな経験を経て、「夢をみる(憧れ)」から「夢になる(誰かの憧れになる)」ことができるかどうか。そこが今後の注目点だと思う。


 
ドレスを着たキャラクターを描くのに、材料の現物を手元に用意してみるはじめ。


上司からはさらなる要求が!ドレスを着てイラストを仕上げよと!そのこころは!!!???

 <Profile>
藤津亮太
アニメ評論家。主な著書は『アニメ評論家宣言』(扶桑社)、『声優語』(一迅社)など。アニメなどのコラムを多数執筆。

















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