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【第20回】藤津亮太 漫画試し読み放浪記




新作・旧作、注目作に話題作。いろいろ気になるあの作品を、ちょっとだけ試し読み。そんな調子でマンガの世界を放浪していきます。
【第20回】 ナナジン

 七福神にちなんだ能力を持つ男女が戦い合うデスゲームもの。……本作の内容をひとことで言い表すならそうなるのだけれど、読み始めると、そんな“ジャンル感”におさまりきらない人懐っこさがあり、それが楽しくてページを繰ってしまった。

 高校生の雲類鷲ナナが祖父の墓前にお参りをしていると、突如、周囲の墓石をふっとばして女の子が現れる。彼女は、ナナが中学時代の友達、藤堂イツカだった。
 たとえば、この時の倒れているイツカ、そしてナナに気づいたイツカがぐいと顔を近づける様子が、大きなコマのアップで描かれている。大きなアップは、読者に親しみを感じさせる。絵柄の持ち味も加わってキャラクターの体温が伝わってくる。

 イツカは毘沙門天の力を手に入れてしまったため、七福神の力を持つ7人=七福人(ナナジン)の戦いに巻き込まれていたのだ。七福人たちの中で勝ち残ったものだけが、その願いを叶えられるという。そしてナナはイツカの前で、自分もまた同種の力を持っていることを明かし、イツカを攻撃してきたヘッドホンの少年(二階堂)を殴り飛ばす。

 アップが入るのはシリアスなシーンだけではない。たとえばナナが戦いの途中で「遅刻するといけないから、それは後で!」という時や、ヘッドホンの少年が実はイツカが好きだと見透かされて顔を真赤にするシーンでも、かなり大きなコマでアップが描かれていて、ここではシリアスなシーン以上に、キャラクターに親近感がわくように描かれている。
 しかもイツカはともかく、ナナは極端にシンプルで真っ直ぐな性格だし、ヘッドホン少年は見かけのクールさと裏腹にポンコツだし、イツカを慕って現れる戸部おいりは暴走ぎみだし、どのメインキャラクターも適度におバカな味付けがされている。そんなおバカなキャラクターたちの人間臭さと、アップで伝わる体温の高さがうまくマッチングして、この作品の「人懐っこさ」になっているのだ。その人懐っこさが居心地がいい。

 第1巻は戦闘狂っぽいあらたな七福人が登場し、次巻に興味をつないで終わる。この「人懐っこさ」を保ちながら、本作はデスゲームを終わりまで描ききることができるのか。そこが一番の楽しみだ。 

 
突然現れた女の子はナナの中学時代の友達・イツカだった。
 


「好きなんでしょ」と言い当てられ(?)戸惑うヘッドホン少年。登場時のクールさはどこに!?

 <Profile>
藤津亮太
アニメ評論家。主な著書は『アニメ評論家宣言』(扶桑社)、『声優語』(一迅社)など。アニメなどのコラムを多数執筆。




















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