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【第22回】藤津亮太 漫画試し読み放浪記




新作・旧作、注目作に話題作。いろいろ気になるあの作品を、ちょっとだけ試し読み。そんな調子でマンガの世界を放浪していきます。
【第22回】 ギャルとオタクはわかりあえない。

「ギャル」と「オタク」が並んだタイトルから、クラスの中の“クラスター”間のギャップを描く漫画かと思ったらさにあらず。本作が4コマのスタイルで、楽しそうに――そして大切に――描くのは、お互いの秘密を知る者同士の間に生まれる甘い共犯関係だ。ただしこの共犯関係、一筋縄ではいかない。

 クラスでも目立つギャルグループのひとり、早乙女まりあには秘密があった。それは彼女が萌え系アイドル、TENの大ファンだということ。ある日早乙女は、TENのCDを手に入れて盛り上がっている姿を、同じクラスの中でも地味で影の薄い音無天音に動画で撮影されてしまう。ここでギャルとオタクの間に関係性が生まれるのかと思いきや、第1話のラストで物語は大きく転調する。

 実は音無はアイドルのTENと同一人物だったのだ。驚く早乙女。そんな早乙女に気づいて、TENのCDで盛り上がる早乙女の動画をチラつかせながら、あやしく笑って音無は言う。「みんなには内緒ね♡/言ったらどうなるかわかるよね……?」。そして早乙女の「あたしの心の天使は/とんでもない悪魔でした……」というモノローグ。

「人は愛されていることを武器に何でも言える。反対に誰かを愛せば、その武器を渡すことになる」というのは映画『ファミリービジネス』の中に出てくるセリフ。ことほどさように愛とは非対称なもの。純情なギャルである早乙女と、自分が可愛いと自覚しながら普段は地味を演じている音無=TENの関係は、この映画のセリフの通り、とても非対称なものなのだ。かくして漫画は、早乙女がTENへの愛の重さ故に武器を手放しまくってしまう様子をコミカルに綴っていくことになる。

 物語が進むとこの2人に加えて、TENと同じ事務所のアイドル、ミッチー、早乙女の妹のゆりあ、アイドルのまりんといったキャラクターが登場する。だが「多く愛したほうが“武器”を手放してしまう」という姿勢はずっと貫かれている。相手がほかの人に見せていない秘密を共有しても、いや、共有するからこそ、どちらの愛がより重いのかが重要な意味を持つ。本作が描く共犯関係は、愛の重さで傾きが変わるシーソーの上に乗っている。だからこそ、その共犯関係は甘くドキドキと楽しいものになっているのだ。


 
大好きなTENちゃんの握手会のためなら何でもやるギャル早乙女。


大好きなTENちゃんが、まさかクラスメイトだったなんて…。

 <Profile>
藤津亮太
アニメ評論家。主な著書は『アニメ評論家宣言』(扶桑社)、『声優語』(一迅社)など。アニメなどのコラムを多数執筆。






















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