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【第23回】藤津亮太 漫画試し読み放浪記




新作・旧作、注目作に話題作。いろいろ気になるあの作品を、ちょっとだけ試し読み。そんな調子でマンガの世界を放浪していきます。
【第23回】 オモテナシ生徒会

 いつの間にか漫画というのはずいぶんと漫画っぽくなくなってしまった。それは単に絵柄がリアルになったとか、そういうことだけではない。むしろ絵柄より、漫画にある種の情報性が求められるようになったことが大きい。たとえば「これが本当の豆腐だ」とか「これが法律の裏技だ」みたいな作品が増えたことで(それはそれでもちろん面白い)、漫画は「そういう楽しみ方」もできるものになった。ただそういう読み方が広がると一方で「漫画に事実と違うことが描かれている」という問題も起きるようになる。こうなると「漫画を読むとバカになる」なんていわれていたころが懐かしくもなってくる。

 『オモテナシ生徒会』を読むと、ずいぶんと清々した気持ちになる。筆から出まかせというか、キャラクターも漫画っぽければ、展開もいきあたりばったり風で、これもまた漫画っぽい。本作を読んで「ためになる」ことはほとんどないけれど、この作品にしかない“空気感”を十分に楽しむことができる。各話のサブタイトルが往年の角川映画のパロディになっており、本編中にも某有名アニメ映画を思わせるくだりとか、そういう小ネタが随所にあるのも、「ほんとはこのネタを描きたいだけでは?」という気持ちになって実に楽しい。

 いちおうあらすじを説明すると、舞台は地方のお嬢様学校。そこに謎めいた1年生が転校してくる。名前は赤羽かのこ。彼女は女性を探しているらしく、写真を手に周囲の生徒に詰め寄るが、答えは得られない。「生徒会なら知っているかも」の声に、かのこは別棟になっている生徒会室へ向かう。そこで出迎えたのが生徒会長の経堂あゆみ。あゆみは、「麻雀に勝ったらなんでも答えてやる」とかのこに勝負を挑む。

 なぜまた麻雀勝負なのか? とか、そもそも途中からルール無用になってないか? そういうことに突っ込んでも意味がない。だって本作は漫画らしい漫画なのだから、その時におもしろそうなほうに進んでいくのである。読者はそれに乗っかって「わはは」と笑っていればよいのである。

 思えば漫画の中で「漫画を読んでいる」を表す印は「登場人物が読みながらわはは」と笑っていることだった。本作は、あの時の漫画の中の登場人物のように「わはは」と無責任に笑って読める1冊だ。

 
転校早々、人探しをしている赤羽かのこ。


女子高生が生徒会室で麻雀勝負。

 <Profile>
藤津亮太
アニメ評論家。主な著書は『アニメ評論家宣言』(扶桑社)、『声優語』(一迅社)など。アニメなどのコラムを多数執筆。























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