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【第24回】藤津亮太 漫画試し読み放浪記




新作・旧作、注目作に話題作。いろいろ気になるあの作品を、ちょっとだけ試し読み。そんな調子でマンガの世界を放浪していきます。
【第24回】 ヘルドクターくられの科学はすべてを解決する!!

 実況プレイ動画製作集団「○○の主役は我々だ!」とドクターくられがコラボをした科学動画を原作にコミカライズ――と書くと、いかにも今風なしつらえの作品に聞こえるかもしれないけれど、読んで見ればこれはとても“懐かしい”作品だ。イマドキの小学生に、往年のコント番組『8時だヨ!全員集合』を見せても、実はきっちりウケるのだが、それに通じる“クラシック”と言いたくなるような、普遍性が本作にはあるのだ。

 小学4年生のウツくんの前に現れたのは、狐面をつけて白衣を身にまとったアヤシイ男。この男こそ、「科学で解決できないものはない」と主張するマッドサイエンティスト、ドクターくられ、だった。そしてドクターくられは、ウツくんの周囲で発生する事件を科学の力で解決してくれる。というか、想像の斜め上方向の提案をして、かえって混乱を大きくしてしまう。
 
 お話の性質上、ドクターくられが奇人変人であるのは当然なのだが、そもそも主人公のウツくんの性格も大概なのだ。エッチで、欲張りで、自尊心が高い。現実にいたらやっかいだなぁという性格の人間でも、そのキャラクターを笑っているうちに、どこか親しみやすさすら感じてしまうのがギャグ漫画の魅力なわけでで、そういう意味では、ウツくんは正統派のギャグ漫画の主人公といえる。

 ウツくんの個性が最大限に発揮されているのは、第1巻VOL.6だろう。錬金術を前フリに始まるこのエピソードは、ドクターくられのせいで貧乏になったウツくんが、「金を作れ」と言い出すのがすべての発端。

 まずドクターくられは「ご家庭でつくれるサファイアの作り方」を紹介し、さらに、水銀に強力な中性子線をあてて金にするという方法があるという科学的な解説へとステップアップ。しかしお話はなぜか最終的には仮想通貨の話題になって、ウツくんはなんとそれで大儲けしてしまう。47人の美人秘書に囲まれ、担任のひな子先生にも、札束を見せながら「僕の48番目の妻の座なら空いていますよ…?」などと言うほどの成り上がってしまう。このウツくんの「欲望への弱さ」とそれに比例するような成り上がりのスピード感(そして落ちぶれる時も同じように速い)が、いかにも、ギャグ漫画の主人公らしい。

 企画の要のひとつであろう科学のうんちくも、役に立つような立たないようなあえての微妙な扱いで、だからこそ、本作の“クラシック”なノリが際立つのだ。

 
かわいいお姉さんには鼻の下をのばしてしまう主人公・ウツくん。


狐面・くられ先生の名言「科学はすべてを解決する」。

 <Profile>
藤津亮太
アニメ評論家。主な著書は『アニメ評論家宣言』(扶桑社)、『声優語』(一迅社)など。アニメなどのコラムを多数執筆。
























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