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【第30回】藤津亮太 漫画試し読み放浪記『マイ・ブロークン・マリコ』




新作・旧作、注目作に話題作。いろいろ気になるあの作品を、ちょっとだけ試し読み。そんな調子でマンガの世界を放浪していきます。
【第30回】 マイ・ブロークン・マリコ

 1991年に『テルマ&ルイーズ』という映画があった。ルイーズは、夫に粗雑に扱われていた親友のテルマを連れて、週末のドライブに出かける。その夜、テルマがレイプされそうになった時、ルイーズは2人の男を射殺してしまう。追われる身となる2人。その逃避行の中で2人はこれまでにないほど生きていることを実感する。

『マイ・ブロークン・マリコ』も『テルマ&ルイーズ』と同じ、女友達2人の物語だ。だけど主人公のOLシイノトモヨの友達イカガワマリコはもう死んでしまった。だからシイノトモヨは、マリコを虐待していた父の元から、彼女の遺骨を奪い、そのまま旅に出る。目指すのは海。昔、マリコが行ってみたいね、と笑顔で語った「まりがおか岬」。シイノトモヨは、間に合わなかったもうひとりのルイーズなのだ。

 旅の中でシイノトモヨは、マリコのことをいろいろ思い出す。虐待に耐えていた子供時代のマリコ。彼ができても暴力を受けていた大人のマリコ。「シイちゃんに彼氏とかできたら私死ぬから。」と言った高校生のマリコ。マリコは自分が、自分を支えてくれるものがなさすぎて壊れている、と自分の危うさも自覚していた。

 思い出の中でのマリコとの対話するシイノトモヨの心の叫びは最終的に「あんたにはあたしがいたでしょうが!」というところに行き着く。どうして自分をおいてマリコはひとりで逝ってしまったのか。置いていかれたという事実がシイノトモヨを苛む。この気持はどうすればいいのか。

 人生に答えはない。それは残酷なようで救いでもある。

“間に合った”ルイーズとテルマの逃避行の先はどうなったのか。“間に合わなかった”シイノトモヨは、残されてどうするのか。この2作のラストシーンは、正反対の内容だ。だが、どちらの作品のラストも残酷なようで同時に救いも感じさせる。だから、そこに何を見るかは、作品と出会ってしまったアナタの人生が反映されるということでもある。

『マイ・ブロークン・マリコ』はそんなふうに、アナタの人生に真正面から向かってくる作品なのだ。
命がけでマリコの遺骨を奪うトモヨ。


突然思い出したマリコの言葉。トモヨは、まりがおか岬へ走り出す。

 <Profile>
藤津亮太
アニメ評論家。主な著書は『アニメ評論家宣言』(扶桑社)、『声優語』(一迅社)など。アニメなどのコラムを多数執筆。






























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