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【第32回】「この世界の片隅に」の巻



「この世界の片隅に
の巻
 今回は2016年に公開された「この世界の片隅に」を見ました。

 大ヒットした映画なので、戦争の時代を描いたもの、舞台が広島近辺という情報はなんとなく入っていたのですが、実際に見たら想像と全然違う作品でした。

 小学生の頃「はだしのゲン」のアニメ映画を見ていたので、この作品も戦争の悲惨さをストレートに表現するものかと思ったら、まったくそんな様子がないまま物語が終わってしまった。しかもクライマックスへ向けて徐々に盛り上がるとか、細かい伏線をラストで回収するといった王道の展開でもない。だけど、戦争が始まる前の街の様子や、戦時中の人々の生活、物の値段が異常に高いけど賑わう闇市などなど、戦争の時代を知らない自分たちにとって、初めて知るようなことがたくさん詰め込まれている。そして、戦争を起こしてはいけないと改めて思う。たくさんの人が死んでしまうから戦争はいけないではなく、戦争が始まると人々の生活が徐々に苦しくなる。そんなアプローチで描く作品は今まで見たことないですね。

 自分がこれまで見てきたアニメ映画と比べると、感情の起伏が少なく淡々と描いている。他のアニメ映画の場合、兄弟が死んだら大きく感情が揺さぶられて、主人公が号泣したり絶叫したりするけど、この物語の主人公はその事実をただ受け入れる。見ている人を泣かせようとか感動させようということがなく、あまりに淡々と進んでいくので、最初にざっと見たときはダルいと思えたのですが、もう一度見てみるといろんなことがわかってくる。最初はなんでも受け入れるすずさんに引っかかるものがありましたが、もう一度見て、人の死を「しょーがないね」って受け入れる、普通の人でも感情がマヒしてしまうのが戦争なんだと気がついて、こういう戦争の描き方もあるんだなと。なんか教科書のような感じの、ドラマチックではないけど知っておかなければならないエピソードがたくさん入った作品でした。

 原作者の方や監督が資料をしっかりと調べているからなのでしょうか、細かいディティールもよかったですね。原爆が投下された直後の光と爆風の感じは、呉は広島から少し離れているんだなと感じさせるし、ラジオの放送も広島放送局の電波が受信できず、岡山放送局から「がんばってください!」の言葉が流れる。こういった学校では学べない戦争の記録は残しておくべきだし、このような作品は、一度は見ておいた方がいいですね。

 次回は映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」について語ります。

「この世界の片隅に」
Blu-ray BOX

 
 
 
土田晃之Profile
1972年9月1日生まれ/埼玉県出身/ピンでタレント活動中/太田プロダクション所属
ガンダム・サッカー・家電など多方面に興味あり。
 
































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