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いか文庫のマンガ通への道  第34回



~いか文庫のメンバー4人による、おすすめマンガの往復書簡~
 
いか文庫のマンガ通への道 第34回
ちいさい梅小路さん
店主へ

シンチャオ、店主!
私はベトナムで暮らし始めて1年半経つんですけど、自分が日本に帰った時や、日本に一時帰国した友達に必ず買ってきてもらうのが、イカの駄菓子とカリカリ梅なんです。イカのお菓子はベトナムでもいくつか手に入るのですが、カリカリ梅は全く手に入らないのでかなり貴重! そんな”梅”を求めてやまない私が、タイトルに惹かれて読んだ漫画を紹介します! 読んでみたら、食べ物の”梅”とはまったく関係なかったのですが……!

『ちいさい梅小路さん』という漫画です。主人公は14歳の中学生の女の子、梅小路さん。家政婦もいるような家庭で育った裕福な家のお嬢さんです。梅小路さんは、言って見れば世間知らずの小生意気な女の子で、突拍子もないことをしでかすこともあるのですが、決めたことには一生懸命に取り組むので、なんだかんだ憎めない存在です。そんな梅小路さんが大好きな漫画家に会いに行ったり、同じ趣味を持つ転校生に出会ったり、同人誌を作ろうと奮闘したり。新しい経験に触れながら、少しずつ成長していく物語です。

いろんなエピソードがある中でも、私が好きなのは、自分と同じ”漫画好き”の趣味を持つ転校生の小雀さんが現れる回です。小雀さんは梅小路さんの知らないジャンルの漫画を読んでいたり、深夜ラジオを聴いていたり、とにかくいろんな分野のカルチャーに詳しくて。それまでクラスの中でカルチャーリーダーだった梅小路さんが、あっという間にその座を奪われてしまうんです。そこで梅小路さんがとった行動は……。続きは漫画で!

私は小学生の頃から深夜ラジオを聴いていたので、それこそ小雀さんみたいにお笑いとか音楽とか日本のエンタメに結構詳しかったんですよ。でも、あるとき海外エンタメに詳しい子が転校してきたんです。彼女は洋楽しか聴かないし、アメリカンドラマが好きで、海外ゴシップを何でも知っていて。”エンタメに詳しい”と一口に言っても、自分の知らない世界ってこんなにあったのかー! って、衝撃を受けたんです。趣味は合うようで合わないんだけど、その頃から今でもずっと、彼女は私に新鮮な風を運び続けてくれるんですよね。自分の好きな世界だけに浸っていられるのってすごく幸せなことだけど、他の世界を見せてくれる友達に出会えるのも幸せなこと。そんな出会いって一生にどれくらいあるのかなぁ……なんてことを梅小路さんと小雀さんの出会いを見て考えてしまいました。

この本を店主にオススメしたいなぁと思った理由の一つは、梅小路さんが漫画好きで、本屋さんに足繁く通っているということ! 店主も気に入ってくれるんじゃないかなぁ。ぜひ読んでみてください。ヘンガップライ!
バイトちゃんへ

『ちいさい梅小路さん』読んだよ!読み始めてすぐは、梅小路さんの自己主張の激しさっぷりに、「おいおい大丈夫か〜〜〜?」って不安になっちゃったりもしたんだけど、梅小路さんの真っ直ぐさがだんだん愛おしく思えてきて、いつの間にかどの登場人物よりも「梅小路派」になっていたよ。

そして私もやっぱり、小雀さんが出てくる回は特別な感情を抱きました。というのも、私も、梅小路さん、バイトちゃんと同じような経験をしたことがあるから。大学生の時だから、2人よりはだいぶ後の話なんだけどね。

大学2年の時だったか、たまたま仲良くなったおしゃれなクラスメイトが「写真部に来てみない?」って声をかけてくれたんだ。写真にそこまで興味があったわけじゃ無かったんだけど、誘われるがまま部室に行ってみたら、同じ学内のはずなのに、それまで出会ったことのない人たちが集まっていたの。だからこそみんなすごく魅力的に見えて仲間になりたくて、入部してみたんだよね。

それからがもう!学校生活が一変するくらいの日々。写真を撮るのも、暗室で現像するのもとにかく面白くて、さらに楽しかったのが、音楽や映画や漫画、そして本の話、いわゆるカルチャーの話を目一杯聞けて、知ることができたことなんだ。しかも、その時の部員の一人が「すごい本屋があるんだけど…」って教えてくれたのが、私が以前働いていたヴィレッジヴァンガードだったの。大学時代の出会いから10年後、普通の会社員だった私がその「面白い本屋」に転職して、さらにその10年後に「いか文庫」を始めることになったのは、偶然か、奇跡か、それとも運命だったのか……。この友達たちとの出会いがなかったら、今この私は無かったと断言します!

だからこそ、この小雀さんとの回の最後、梅小路さんが通っている本屋の書店員・笛田さんが発する一言「自分ひとりで見える世界は……」には、思わず涙ぐんでしまいました。それにね、その後、笛田さんが梅小路さんにお勧めする漫画あるじゃない?これも最近、とても大好きな漫画家さんがお勧めしていて知って、次に読んでみようと思った漫画だったの。自分じゃ出会えないかもしれない、でも人を介して出会える運命みたいなものって、絶対存在するよね。まだ中学生の梅小路さんにも、さらにたくさんの運命の出会いがやってくればいいなと思いながら、もう一回読み返そうと思っているよ。


クラスの中でカルチャーリーダーだった梅小路さん。その座を奪われてしまい……。ぐぬぬ……。

梅小路さんは、ライバル視している小雀さんと、漫画クイズで対決することに⁉
いか文庫 Profile
お店も商店も持たない「エア本屋」だけれど、本屋さんと組んでフェアを展開するなど、本に関わる分野で活動しています。
【店主】と、スタッフの3人【バイトちゃん】【バイトもりもり】【バイトぱん】が、本をお薦めするお手紙をやり取りしていきます。


































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