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いか文庫のマンガ通への道  第37回



~いか文庫のメンバー4人による、おすすめマンガの往復書簡~
 
いか文庫のマンガ通への道 第37回
ようかい歌留多
バイトもりもりへ

今年は、こんなことが起こると思わなかった…ということの連続の日々だね…。どこに行くにも何をするにも、規制があったり用心しなければならない日が来るなんて、全く予想もしていなかったけれど、そんな時だから読んで良かったと思える漫画に出会ったので紹介しますね。

今回おすすめする漫画は『ようかい歌留多』という、江戸時代末期を舞台にした作品です。オランダ人の父と日本人の母を持つ主人公、紫苑(しおん)。髪の毛が赤くて誰が見ても異国人なので、外に出る時はほっかむりをしてます。

紫苑はある夜、美しくてミステリアスな雰囲気を持つ少年、六出(りっか)に出会うのだけれど、彼は彼で妖怪と人間の間に生まれた「半妖」なの。紫苑はもともと妖怪が大好きで、いつか遭遇してみたい!って夢見てたくらいだから、その出会いに大興奮。その後、一緒に「中尊寺」に向かうことになり、その道中でいろいろな事情を持つ妖怪と出会っていきます。

最初は心を開かなかった六出も、紫苑の前向きな明るさに触れているうちに、そしてふとした時に自分に似た寂しさを見せることに気づき、距離が縮まっていきます。

これがなぜ、こんな時だから読んでよかったなのかというとね…。
新型コロナの流行がはじまってからのここ数ヶ月を経て、人との感覚とか距離が変わったなって、物理的なことだけではなく感じることがあるの。今までそこまで考える必要が無かった問題が出てくるたびに、あれ?この人、こんなこと考えてたんだ?って、仲の良い友達や、尊敬している人との考え方の相違が浮き彫りになった気もしていて。相手が普通なのか、自分がおかしいのかに迷ったりもしているから、紫苑や六出や妖怪たちが抱える「普通じゃ無い」って、一体何なんだろう?って、考えるきっかけになるんじゃないかなぁって思ったんだよね。バイトもりもりが何を感じるか、率直な感想を聞いてみたいです。

そういえばもりもりは、鳥取に住んでいたこともあるよね?鳥取といえば、鬼太郎の作者、水木しげるさんの出身地としても有名だけれど、妖怪で思い出すエピソードって、ある?それもあったら教えて欲しいです。ちなみに私の思い出は、境港に行った時に、水木さんの『劇画ヒットラー』を買えて、とても嬉しかったことです。(って、それ、妖怪の思い出じゃなーい!)
店主へ

『ようかい歌留多』読みました!
店主のお手紙にあった「普通じゃない」ってなんなんだろう?っていうことも、考えながら読んでみました。紫苑が妖怪に会いたい!と思っているのも、そもそもは周りと違うことで嫌われたり怖がられたりする自分にはきっと、この世に居場所なんてないんだ、と思っていたからなんですよね。亡くなったお母さんが教えてくれた『ようかい歌留多』という本に出てきた、フシギで面白くて色んな力を持っている妖怪の世界なら自分の居場所がきっとあると思ったから、妖怪の世界にずっと憧れていたのかなあと思いました。

でも、旅をして実際にいろんな妖怪に会ってみると、みんなそれぞれ悲しみや苦しみを抱えていた。理由を知ると、人間と同じなんだなあと紫苑は気づく。大事なひとを喪った悲しみも、親が子を想う気持ちも、ひどいことをされたら辛いと思う気持ちも。

「普通じゃない」「だから一人ぼっちなんだ」って、ずっと思って生きてきた紫苑と六出を見ていたら、自分も「普通じゃない」「だからみんなのようにうまくできないんだ」って思っていること、あるなぁと思いました。傷つきたくないから、隠しているなぁということも。でもこの漫画を読んだら、たしかに「普通じゃない」ってなんだろう?と思えて、大げさですが、前よりも自分の「普通じゃない」ところにも希望が持てたような気持ちになりました。読めて、よかったです!

そうそう!鳥取に住んでいました。水木しげるさんの故郷の境港、一緒に行きましたよね!妖怪で思い出すエピソード、というかこれは水木さんの影響だと思うのですが、私怪談とか怖いものが本当にダメな人間だったんですが、いつのまにか妖怪が怖いものというよりも、どこか愛嬌があったり、身近なものというイメージに変わっていたなあと気づきました。このお話で紫苑たちが出会う妖怪たちも、最初は恐ろしく見えても、人間と同じ悲しみやつらさを抱えていて、同時にやさしさもあるんだって感じるものばかりで、水木さんの妖怪たちと繋がっているような気がしました。

見たら幸せになれるという妖怪「ケサランパサラン」、会ってみたいなあ。
 

妖怪に会えたと喜ぶ紫苑に、自分は妖怪じゃなくて半妖だと告げる六出。
 
妖怪の世界に憧れを持つ紫苑。それを聞いた六出は…。
いか文庫 Profile
お店も商店も持たない「エア本屋」だけれど、本屋さんと組んでフェアを展開するなど、本に関わる分野で活動しています。
【店主】と、スタッフの3人【バイトちゃん】【バイトもりもり】【バイトぱん】が、本をお薦めするお手紙をやり取りしていきます。





































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