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【第37回】藤津亮太 漫画試し読み放浪記『リアデイルの大地にて』




新作・旧作、注目作に話題作。いろいろ気になるあの作品を、ちょっとだけ試し読み。そんな調子でマンガの世界を放浪していきます。
【第37回】 リアデイルの大地にて

 キャラクターとはしばしば読者の“アバター”である。

 各務桂菜が目を覚ますと、そこは朝日がさす木造の部屋。彼女がいるのは仮想MMORPG「リアデイル」の世界だった。鏡を見れば自分の姿もアバターとして作った“ケーナ”の姿をしている。桂菜はリアデイルの世界へと“転生”してしまったのである。

 ケーナはレベル1100のハイエルフ。1500の魔法技能(マジックスキル)と2500の技術技能(クラフトスキル)を修めた史上3人目のプレイヤーでもあり、大抵のことなら困ることのない能力を持っている。となれば、勝手知ったるゲーム世界のことだし、異世界ライフを満喫できそうなものだが、そうはならない。なぜなら彼女がゲームをプレイしていた時から、既に200年の歳月が流れているのである。かつて7つあった国は、戦乱の果てに3つの国に統合され世界は様変わりをしてしまっている。

 1巻ではケーナはまだ、戸惑いながら200年のギャップを埋め始めたばかり。ゲームの里子システムを使って作った養子が、どうやら生きているらしいことがわかるが、本編にはまだ登場はしてこない。その代わりに印象に残るのは、リアデイルに転生したことで生きることを実感しているケーナの様子だ。

 各務桂菜は、旅客機の墜落事故によって大怪我をした結果、4年間もの間、ベッドの上で寝たきりの生活をしていた。体には生命を維持するためのさまざまな装置が取り付けられ、栄養摂取は点滴が中心。そこに停電が起こったため、現実の彼女は命を落とし、そしてリアデイルに転生したのだ。

 だからケーナは、リアデイルでご飯をとてもおいしそうに食べるし、森の中を駆ける時は「走り方を忘れていて」苦労する。そして、お酒を飲んで酔っ払う。現実の肉体ではできなかったことを、ゲームの中に転生して実感するのだ。本作は、そのケーナの様子をとても実感を込めて描いている。ひとつひとつの行動がうれしかったり楽しかったりする様子がとてもよく伝わってくる。

 各務桂菜が感じることができなかった生の実感を、アバターであるケーナを通じて実感すること。そしてその時、ケーナは読者のアバターとしても機能して、読者にリアデイルの大地をまざまざと実感させてくれるのである。ケーナというキャラクターは、リアデイルという世界を読者にリアルに感じさせてくれる水先案内人なのである。


MMORPG「リアデイル」に転生した各務桂菜は、彼女のアバターであるケーナになっていた。


現実世界で寝たきりだった各務桂菜はケーナとなってもうまく走れない。

 <Profile>
藤津亮太
アニメ評論家。主な著書は『アニメ評論家宣言』(扶桑社)、『声優語』(一迅社)など。アニメなどのコラムを多数執筆。





































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