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【コラム】“綻び”が、新たな“綻び”を呼び込む『なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか?』




新作・旧作、注目作に話題作。いろいろ気になるあの作品を、ちょっとだけ試し読み。そんな調子でマンガの世界を放浪していきます。
【第47回】 なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか?


 人類を含めた5種族間で戦われた「五種族大戦」。その大戦に勝利したのは、英雄シドが率いる人類だった。「悪魔族」「蛮神族」「精霊族」「聖獣族」の4種族はそれぞれ墓所と呼ばれる黒いピラミッドに封印され、100年が経過した。

 そんな平穏な世界がある日、突然一変する。世界は“上書き”され、そこに広がるのは人類が「五種族大戦」で破れ、地下世界に逃れた世界。そこにただ一人、「上書き」をされる前の世界を覚えている人間がいた。それは墓所を管理する人類庇護庁に所属していたカイ。かつての同僚たちとも再会するが、彼らはカイのことを覚えていなかった。カイただ一人だけが皆から忘れられているのである。

 

カイの任務は、墓所と呼ばれる黒い建造物を管理すること。

▲まさに「上書き」の瞬間の世界。

 

 墓所を訪れたカイは、そこで英雄シドの剣コードホルダーと、様々な種族の特徴を合わせ持つ少女リンネを見つける。リンネはカイと同様、“上書き”前の世界の記憶を持っていた。カイは、シドの代わりを引き受ける覚悟を決め、他種族との戦いを決意。物語は、他種族との戦いと、“上書き”の謎を巡って進んでいく。

 本作のおもしろいところは、“上書き”された世界(作中では「正史」に対して「別史」と呼ばれている)という考え方だ。ここでは、目の前にあるもうひとつの現実を「どこかの時点で別の歴史に分岐した世界」と捉えるのではなく、「上から書き直された世界」というふうスタンスで捉えているのだ。一つの世界の上に強制的に別のレイヤーをのせている状態とイメージしてもいいかもしれない。

 

▲派手なアクションシーンも満載

 

▲「上書き」後の世界では、仲の良かった同僚もカイを覚えていなかった…。

 そのように世界を捉えているから、謎を解くには、歴史をたどるという「時間軸に沿った発想」は前面に出てこない。重要なのは、上に載せられたレイヤーの“綻び”を見つけること。その“綻び”の最たるものが、上書きされなかった主人公カイであり、同じ記憶を持つリンネというわけだ。この“綻び”のところにだけ正史が顔を覗かせるのである。

「試し読み」の今回は第3巻まで読んだが、、第3巻では冥王ヴァネッサと預言者シドがなにか関係があったらしい、という“引き”も出てきた。ここではカイという“綻び”が、新たな“綻び”を呼び込んだのである。

 この“綻び”が次第に大きくなっていくのか、それともまた別のアプローチで、別史が再書き換えされることになるのか。派手なビジュアルのアクションシーンの楽しさに加えて、そのあたりが注目点になっていくのではないだろうか。

 <Profile>
藤津亮太
アニメ評論家。主な著書は『アニメ評論家宣言』(扶桑社)、『声優語』(一迅社)など。アニメなどのコラムを多数執筆。















































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