KADOKAWAの無料漫画(マンガ)5413作品勢揃い

無料漫画読むならコミックウォーカー ComicWalker

ニュース・お知らせ

【コラム】「こういう世界があったらいいな」という気持ちをうまく表現『農業男子とマドモアゼル』




新作・旧作、注目作に話題作。いろいろ気になるあの作品を、ちょっとだけ試し読み。そんな調子でマンガの世界を放浪していきます。
【第49回】 農業男子とマドモアゼル


「人の良さそうな絵柄」というのがある。それは作者の人柄というより、その描かれたキャラクターたちの人柄が良さそうに見える絵柄ということだ(もちろん作者の人柄が絵柄に反映している部分も多分にあると思うのだけれど、そこは読者には確認しようのないことなのでここではおいておく)。

『農業男子とマドモアゼル』はそんな人の良さそうな絵柄で描かれている。だから冷たい顔、不機嫌そうな顔を描いても、どこか優しい。周囲を威嚇するような表情のどこかに、人間臭いどこか抜けたところ、やさしいところが感じられてしまう。そこに読者はホッとする。この絵柄で描かれたこの世界は、どこかで安心できる。こんな世界にならいてもいいかもしれないと思うことができる。

 

▲第一印象は最悪な出会いだった主人公・
恵里菜と、農業男子・優真

恵里菜は、優真への反発心から長野への移住を決める。

 物語は、彼氏にフラれ、派遣先からも切られた早瀬恵里菜が30歳を迎えたところから始まる。どん底の30歳。勢いで婚活バスツアーに申し込んだ恵里菜は、長野県を訪れる。観光を堪能した後の婚活パーディー。そこで恵里菜は、農業を営む吉川優真と顔を合わせることになる。話の接穂に困って思わず「農業っていいですよね。スローライフって感じで」と言ってしまう恵里菜。それに「農業舐めてんの?」と冷たく返す優真。この最悪な出会いがきっかけとなり、反発した恵里菜は長野に移住して農業に挑戦をすることを決める。

 移住初日、農業アドバイザーとして現れたのが優真だった。

 

▲いよいよ農業デビュー!

▲そこに農業アドバイザーとして現れたのが優真だった。

 ラブコメディというにはゆったりとした語り口。農業についても、豆知識はあっても、2巻までの段階ではまだ“厳しさ”というところまでは描いていない。でも、本作はだから、いい。完全にファンタジーではなく、現実の要素を取り扱いながらも、読者の「こういう世界があったらいいな」という気持ちを、人の良さそうな絵柄がうまく表現している。この絵柄だからこそ、突っ込めばシビアになりそうなそれぞれの要素をいい温度感で包んでいる。この「人柄の良さ」は、漫画だからこそ表現可能な雰囲気だ。
 <Profile>
藤津亮太
アニメ評論家。主な著書は『アニメ評論家宣言』(扶桑社)、『声優語』(一迅社)など。アニメなどのコラムを多数執筆。

















































このページをシェアする

関連作品