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【コラム】人のために作るご飯『合鍵くんと幸せごはん』




新作・旧作、注目作に話題作。いろいろ気になるあの作品を、ちょっとだけ試し読み。そんな調子でマンガの世界を放浪していきます。
【第50回】 合鍵くんと幸せごはん


先日、妻と話をした。「食べる人がいなければ、料理なんてしないよね」。

結婚してから料理を覚えた“にわか”な僕も、そうではない妻も、料理の上手い下手を超えて、そこについては意見の一致を見たのだ。家族に代表される「おいしそうに食べる人」がいることは、それだけで「料理をする理由」になる。本作はまさに、そんな「人のために作るご飯」が主題の作品だ。


会社員の渚は、なりゆきから長距離ドライバーになった浩と一緒に暮らすことになる。浩は7歳年下で、かつて渚の隣の家に住んでいた男の子だった。浩と渚は恋人でもなく、友達でもない。でも偶然であった2人が、互いにご飯を一緒に食べたいと思う相手になってしまう。物語はそんな微妙な2人の距離を丹念に描いていく。

本作は第1話の冒頭で「ひとがものを食べる意味ってなんだろう」というナレーションで始まり、続けて渚が会社のデスクでコンビニ弁当を食べながらひとりで食べてると味気がないなぁ…」と思うシーンを描く。ここから本作のスタンスは明確だ。そして渚のスマホに、浩が帰宅の予定を伝えてくる。


 
ひとりランチ中の渚。なかなか箸が進まない
 
半同棲中(居候?!)の浩が帰宅。渚のこの笑顔
 

「グルメ漫画」というほど料理に軸足があるわけではなく、かといって「自然体の食の風景をスケッチする」というほど客観的でもない。本作で大切に描かれているのは、2人で一緒に過ごす「食事の時間」なのだ。ご飯は誰かと一緒に食べることで、単なる栄養補給ではなくなり、特別な時間になる。

 
渚が作りすぎたハンバーグを無心で食べる浩
 
幸せを感じた瞬間

 
本作1巻のポイントは、浩が鍋料理を食べながらいう、「根無し草のままでいたくない」というつぶやき。つまり浩は自分なりの“ホーム”を探しているのだ。

 
心を許した渚に浩の本音が・・・


若くしてひとりで暮らしているということは、どうしても「仮住まい」の気分が漂うことになる。でも、そんな「仮住まい」でも自分以外の誰かその空間を共有しているとなると、そこが自然と“ホーム”の色彩を帯びることになる。ホームをホーム足らしめるのは、私ではなくもうひとりの相方のほうなのだ。

 
出前じゃなく一緒に食べるご飯がいい


浩と渚のこの“ホーム”は、雨宿りのような一時のものなのか、それともこれからも続いていくものなのか。それは2巻までではわからない。でも、一緒に食事を摂っているこの時間が、2人にとってかけがえのないものであることは十分伝わってくる。浩と渚の行く先が気になる一作だ。
 
 
 <Profile>
藤津亮太
アニメ評論家。主な著書は『アニメ評論家宣言』(扶桑社)、『声優語』(一迅社)など。アニメなどのコラムを多数執筆。


















































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