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【コラム】清々とした廃墟の世界『終末ツーリング』




新作・旧作、注目作に話題作。いろいろ気になるあの作品を、ちょっとだけ試し読み。そんな調子でマンガの世界を放浪していきます。
【第53回】終末ツーリング


「世界も滅んだし、セローで旅に出よう」

これが第1巻帯のキャッチコピー。その通りの内容の本作だが、それがなかなか清々として楽しいのである。

エンジンをモーターに換装したオフロードバイクのセロー。それに乗っているヨーコとアイリ。2人の少女は、セローで箱根を訪れ温泉を楽しみ、横浜ベイブリッジに遊び、海ほたるまで足を伸ばして夜景を楽しむ。こう書いてみると、ごく普通のツーリングのようだが、普通ではないのは、世界が既に滅んでいることだ。


 
 

建築物は荒れ果て、植物は生い茂り、野生動物たちがいたるところで暮らしている。箱根では、機能停止した(かに思えた)機動戦闘車も中に死んだ兵士を乗せたまま、静かに佇んでいる。生きている人間はヨーコとアイリの2人だけ。そんな世界を2人は、各所に残された保存食などを集めつつ、サバイバル・ツーリングを続けている。

 
 
 


台詞の端々から、ヨーコが長い間シェルターの中で暮らしていたことがわかる。彼女はシェルターを出て、ツーリングを始めたようだ。また、どこで出会ったのか、アイリはただの“少女”ではない。目の前のツーリングの描写の向こう側に、そうした「これまでの出来事」が小出しに描かれる。

重要な小道具はヨーコが持っているスマホ。もちろん電波なんか飛んでいない。ヨーコは、そこに「お姉ちゃん」という女性が、世界が滅びる前にツーリングしていた写真を収めている。そしてその写真を頼りに、自分でその場所を巡っているのである。


 
 


本作が清々しく楽しいのは理由が2つある。

まずひとつは、この2人の性格が明るく、ちょっとしたトラブルに見舞われても深刻になることはないからだ。流山で泥沼の中を進むことになって泥だらけになっても、海ほたるで大量のネズミに囲まれても、2人はどこか楽しそうに笑っている。なお個人的に好きなエピソードは『渚にて』を思い出させる「秋葉原」(前後編)だ。


 
荒れ果てた流山の湿地帯を進む二人  

海ほたるを散策中にネズミに襲われる二人
 
荒廃した秋葉原で人探しする二人
 

そこに廃墟そのものの持つ清々しさが加わる。

廃墟はそれを見る人に「人間が存在しなくても世界は存在すること」「動物や植物の生命力の強さ」などの事実を突きつけてくる。その事実を前にすると人は、自らも人間ながら「人間がいないとこんなに世界はシンプルなのか」と、清々した気持ちになってしまうのだ。

おそらく連載が続くうちに「彼女たち以外の人間はどうなっているのか」「世界に何が起きたのか」は明らかになるのだろう。でもそんな因果とは関係なく、ヨーコとアイリにはこのままずっと、あっけらかんとした調子で清々とした廃墟を読者に紹介し続けていってほしい。
 


















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