漫画「ちゃんと吸えない吸血鬼ちゃん」がアニメになるまで 二式恭介先生1万字インタビュー！後編
全国の漫画ファンの皆々さま、おはようございます。
カドコミュのTです。
前回は秋アニメ放送中の『ちゃんと吸えない吸血鬼ちゃん』インタビュー前編として、二式恭介先生のマンガ描き歴や同作の成り立ちなどについて、お話を聞かせていただきました。今回は後編として、いよいよアニメ化決定からその制作への関わり、また各種見どころ、そしてご自身の「初恋アニメ」についても伺っていきたいと思います。
ちなみに先週同様まだ本作品を全く知らない方々に…「ちゃんと吸えない吸血鬼ちゃん」とは…
血を吸われた者すべてが虜になる圧倒的尊み！
新感覚甘やかし餌付けコメディ！
(カドコミより)
という、ミステリアスでカッコいい吸血鬼を演じながら、実は血を吸うのが下手ですぐにお腹が空いてしまう石川月奈(ルナ)の高校生活を描くコメディ。
彼女に吸血の練習台役を申し出るクラスのモブ的男子・大鳥をはじめとした気のいいクラスメイトたちとの交流が常に温かく、何よりミステリアスキャラを解いた時のルナがほぼ赤ん坊状態(2頭身でちょいポンコツ)で可愛い！下手なりに一生懸命に血を吸う姿がなお可愛い！
見る者を至福の「ママになっちゃう」空間にいざなう、とても優しい作品なので、漫画もアニメも是非見てくださいね。ちなみに漫画は10月に最終9巻が出たので、現在一気読み推奨です！
では、インタビュー始めさせていただきます！
■ルナちゃん＆大鳥より裏設定の多いモブキャラがいる
カドコミュT：差し支えなければ先生の1番好きな今作のキャラクターと気に入ってるエピソードを伺っていいですか？
二式先生：キャラクターは全員に愛着があって…、特にB組のキャラクターとかは高校時代とか、専門学校時代に作っていたキャラクターだったりするので。
カドコミュT：B組…って、ルナちゃんのクラスメイトとかじゃなくて、隣のクラスですよね？
担当編集K：二式先生はモブの作り込みがエグいんです。アニメ化する時も設定資料で全然知らない情報がめちゃくちゃ出てきたんですよ。このモブキャラの名前はこうでした、設定はこうでしたみたいな話が続々と…。
二式先生：元々が別の読み切りとかで描いて日の目を見なかったキャラクターとかなので、モブによってはルナちゃんとか大鳥よりも設定が多いかもしれないという(笑)。でも、「吸血鬼ちゃん」全体としてやっぱり好きだなって思えるのはルナちゃんかな。描いていて、描いている自分が楽しくて、癒されていたキャラクターだなって。
カドコミュT：ルナちゃんを描いていて特にテンション上がったエピソードとかありますか。
二式先生：猫カフェ回(3巻収録26話)ですね。猫の着ぐるみを無理やり着せられたルナちゃんで、あの顔は描いていて「よっしゃ！」ってなったお気に入りです。多分、アニメでも描かれると思うので楽しみですね。
↓二式先生が「よっしゃ！」ってなった猫着ぐるみのルナちゃん
カドコミュT：ちなみに、先ほどの全キャラ作り込みが凄いって話を聞いた後なので、ちょっとルナちゃんを抜きにして気に入っているエピソードとかも聞いていいですか？
二式先生：7話の球技大会(アニメでは第3話)ですかね。B組をゲストキャラとして何も相談せずに忍び込ませて…突っ込まれずに無事登場させられたので。やった！って(笑)。
担当編集K：やたらキャラデザがしっかりしたモブがいるなとは思ってましたよ(笑)。
■アニメ化決定がなければ「吸血鬼ちゃん」は2年生編で終わっていた
カドコミュT：そんな二人三脚の日々が続いて、ある日「アニメ化が決まりましたよ」っていうK氏からの電話が入ると思うんですけど、その日の話をできるだけ詳しく聞かせていただけますでしょうか？
二式先生：その日は…「よろしくお願いします」ってお返事をした後からの自分の記憶が本当にないんですよね…。電話をいただいたのは夕方とかだったと思うんですが、なんかそれまでやってた全てが吹き飛ぶぐらいの衝撃がありまして…なんかめちゃめちゃびっくりしました。
カドコミュT：事前にアニメ化の打診は来てるよみたいな話は…K氏はしていたんですか？
担当編集K：本当に決まるまでは不要に気持ちの上下をして欲しくなかったので、言わずにいましたね。
二式先生：私としては、本当に晴天の霹靂でした。でもそうしていただいたのは、自分としてはありがたいですね。
カドコミュT：当日、K氏はテンション高く電話をかけてきたんですか？
二式先生：冷静でしたね。びっくりして舞い上がってる自分を抑えてくれる感じで。
担当編集K：そのタイミングって私たちの中で「吸血鬼ちゃん」は最終回直前だったんです。でも、アニメ化するならもうちょっと続けた方がいいんじゃないか？っていう相談を同時にしなければいけなかったので。編集長へそうした調整が可能かどうかを確認して、二式先生へ確認と相談の電話をした…という。
二式先生：当時はルナちゃんが引っ越してしまうかもという大晦日のエピソード(5巻56話)とあと1話分で最終回という流れで決まっていたんですよね。最終回の内容もできていたんですが、それが一旦飛んだという。
担当編集K：「吸血鬼ちゃん」は2年生編で終わる予定だったんです。それが急遽3年生編をやろうってことになるので……二式先生が嫌だって言う可能性もあるな、とも思ってましたよ。
二式先生：いやいや、私としては「描かせていただけるのなら、ずっと描きます！」で。
カドコミュT：電話の後で「寿司食い行くかーー！」とかならなかったんですか？
二式先生：いや。その時の自分は入院しようか…くらいに体調崩してたので…(笑)。でもその電話で、一撃で元気になりましたよ。
カドコミュT：効きましたね。その電話をもらって直後に筆入れる原稿って楽しかったですか？
二式先生：それこそさっき話していた大晦日回だったんですけど。舞い上がりながら…でも、楽しいというより「次の展開、どうしよう…」って感じでしたね。描きます！とは言ったけど、何も考えてなかった…と。
■キャラや町の裏設定から時間割表まで、作りに作ったアニメ用資料
カドコミュT：そんな中で、二式先生にはアニメ化周りの諸々のチェックが入ってきます。その様子は8巻の末にもいっぱい書いてありましたけど、楽しかった作業とか、アニメ制作チームに凄いなと思ったこととか聞いてもいいですか？
二式先生：アニメスタッフさんは常に凄かったですよ。一応原作者という立場で制作現場に入らせていただいたんですけども、実質その中では1番素人なので、もう目の前に次々とプロの仕事っていうのを見せられて、すごい刺激を受けて、もうそれに振り落とされないようにしがみつくのに精一杯でしたね。
カドコミュT：原作者にはアニメスタッフからいろいろな質問が来るじゃないですか。それに答えるために二式先生はクラスの座席表とか学校の見取り図を自作したと伺っていますが…。
担当編集K：質問されたこと以上に、たくさん描いてくれましたよね。「設定資料も(あったら)欲しいらしいです」くらいだったんですけど、二式先生が作ってきてくれたものを見て「こ、こんなに⁉」って驚いたくらい。
カドコミュT：どんなものをこの時に作ったのか細かく教えてもらっていいですか？
二式先生：座席表と学校の見取り図と、原作ではここのカメラ位置から映してますみたいな説明と…。
↓二式先生自作の座席表と教室の資料一部
カドコミュT：そんなことまで描き込んだんですか⁉
二式先生：あと、メインの4人のプロフィールと、とりあえず2巻までに出てくる衣装全部と、画面に入ってくるクラスメイト達と、樫ノ木台高校2年A組の時間割と…あと、樫ノ木台って実はこんな町なんですという設定とか、B組のキャラクターの名前や設定の資料もアニメにしていただけるということでここぞとばかりいれさせていただいて…。
↓二式先生作のクラスメイトの私服資料(一部)
↓二式先生思い入れ大のB組キャラ登場箇所資料(一部)
※自作資料をさらにいくつか見せてくれる二式先生
カドコミュT：この…樫ノ木台駅のイメージ用写真とかは、自分で撮りに行ったんですか？
二式先生：そうですね。
カドコミュT：衣装の三面図とかもあって、B組のキャラは原作でのモブ登場コマを添えて丁寧に説明していて、これはもう…アニメ制作スタッフが作るやつですね…。これだけの大量の資料、スタッフさんは驚いたんじゃないですか？
二式先生：ええ、でも全部活かしていただいて、さらにブラッシュアップというか、送ったものは本当に倍以上の熱量で返してくれていましたね。
担当編集K：制作プロデューサーの方はこの資料をめちゃくちゃ読み込んでくれて、理解度もエグいし、作品愛も深いし、二式先生ワールドを隅々まで読み込んでくださってましたよね。
二式先生：もう言葉なくとも分かっていただけるみたいな感じで(笑)。
担当編集K：本当にありがたかったです。
カドコミュT：8巻末のアニメ化舞台裏の漫画を読んでいると、オープニング曲とエンディング曲を聴くのは嬉しかったんだろうなとか、アフレコ見学も楽しかっただろうなとか思うんですけど。
二式先生：はい、最高でした(笑)。
カドコミュT：脚本会議の時に資料を見て「全てが書いてある！」ってコマがあったと思うんですけど…あれってどんな会議だったんですか？
二式先生：何ていうか、すごいキャラクターの深いところまで考えてくださっていて、各キャラについて「このセリフ言いますか？」とか、「もう少し違うリアクションしますか？」とか「だったらその行動理由は何でですか？」とか、そういう細かいところまで詰めてくれていて…。
担当編集K：最初の頃にシリーズ構成の綾奈ゆにこさんが、さっき先生が言ったようなキャラの内面についてめちゃくちゃいっぱい確認してくださって、そこからは全て理解してくれていた感じでしたね。凄かったです。
二式先生：むしろ自分の方が「大鳥ってどんなキャラですか？」って聞かれたときに「コイツ不思議な奴なんですよ…」しか言えなくて(笑)。中々説明が難しくて、うまく言語化できなかった覚えがあります。そういう時はK氏に頼ってましたね(笑)。
カドコミュT：脚本会議、楽しかったですか？
二式先生：めちゃくちゃ楽しかったです！
カドコミュT：通うのは苦じゃなかったですか？
二式先生：そこまで行くのが毎回わくわくでした。
カドコミュT：いいですねー。
■アニメ「吸血鬼ちゃん」は没入感マシマシ、ルナちゃんのママになった気持ちで楽しむ
カドコミュT：そんなこんなで完成したアニメ「吸血鬼ちゃん」、原作者としてどう楽しんでいるか、視聴者の方々にはどう楽しんで欲しいか…みたいなところをお聞きしていいですか？
二式先生：もう全部良いですよ。原作を読んでいただいてる方は、漫画での小ネタとかも色々入れていただいてるので、そこにクスっとしてもらえると思います。また、原作ではどうしてもルナちゃんと大鳥と…ちょっと周辺ぐらいで、その視野は割とキャラクターに寄って描いていたんですよね。けど、アニメになることでルナちゃんが歩いてる通学路とか駅とか、それこそ美術室、学校全体とかっていう空間とその空気感を感じていただけるような作りになっていて。「吸血鬼ちゃん」世界への没入度がめちゃめちゃ高まっているという。
カドコミュT：没入感がアップした「吸血鬼ちゃん」ですか。
二式先生：なので、本当に原作以上に樫ノ木台の一員になった気持ち、ルナちゃんのママになった気持ちで楽しんでいただけるのではないかと思います。あと、もちろんルナちゃんはめちゃめちゃ可愛いですよ。動いて喋るちびルナちゃんは本当に可愛いです。
カドコミュT：ちびルナちゃんの演技に関しては、相談されたり感心したこととかありましたか？
二式先生：アフレコの時、音響監督さんの指示で「ルナが大きい時」「デフォルメしてるけど中身は大きいルナの時」「デフォルメしていて赤ちゃんのルナの時」で分けてらっしゃったんです。こういう細かいところを気にしてくださるんだなと思って感動しました。
カドコミュT：いい話ですねー。
二式先生：アニメは原作を読む以上に「吸血鬼ちゃん」の世界が分かる作品になっていると思います。原作の全てを余すところなく…いや全てが2倍3倍パワーアップされているので、このアニメを見れば、原作を読んでいない方々にもよりよく吸血鬼ちゃんが分かっていただけると思います。
カドコミュT：で、続きは原作で読んでもらいたいですね。
二式先生：(笑)その後が気になってくれて、楽しんでいただけたら嬉しいですね。
カドコミュT：では、アニメ以降で特に読んで欲しい好きなエピソードって聞いてもいいですか？
二式先生：みんなが赤ちゃんになっちゃう回(9巻101話)とかは読んで欲しいですね(笑)。
カドコミュT：そんな原作も今年の10月に最終9巻が発売されました。完結までたどり着いた感想などお伺いしても？
二式先生：そうですね。初めての雑誌連載として、物語を無事に終わらせることができたってことにほっとしてます。9巻まで続けられたっていうことが、本当に皆さんの応援と、支えてくれたK氏のおかげだと思っていまして、本当に感謝しています。初めての連載で至らないとこばっかりだったと思うんですけど、その初めての連載が「吸血鬼ちゃん」で良かったなって、自分でも思える形になったかなと思ってます。なので、今はただのファンとしてアニメを見ているのと…あとは新作作らなきゃ、と。これからもお絵かきして生きていきたいので(笑)。
■ミニキャラ好きは初恋アニメ「家庭教師ヒットマンREBORN!」の影響
カドコミュT：素晴らしい！と、きっちり締めていただいた後で聞くのが微妙なのですが…今回アニメ化きっかけのインタビューということで、おまけ要素としてご自身が人生で1番最初にはまった初恋アニメの話を聞かせていただいてもよろしいですか？
二式先生：うーん…幼少期だと自分はしっかりアニメを見てた経験が少なくて、漫画も家であんまり読んでなくて、自分で描いて自給自足してたんですよね。そんな中で、最初に何のアニメにハマったんだろうってなると…グッズとか買っていたなぁっていう感じで「ポケモン」ですかね。
カドコミュT：好きなキャラはいますか？
二式先生：好きなキャラは…草タイプが好きです。
カドコミュT：せ、先生…タイプで語るのは勘弁してください(笑)。範囲が広すぎる。そもそも二式先生、前段のクワガタ好き話があったのに虫タイプは好きじゃないんですか？
二式先生：あ、ヘラクロス好きですよ。
担当編集K：カイロスじゃないんだ。やっぱハサミがあっても黒ツヤがないとだめなんですかね。
カドコミュT：さて………もうちょっと熱を感じられる初恋候補を探してみましょうよ。
二式先生：あとは「ハム太郎」とか見てたなって。テレビをつけたら偶然やってたみたいなのをちょこちょこ見てたみたいな感じで。ちゃんとしっかりアニメを毎週楽しみに見始めたのは小学校高学年以降でしたね。
カドコミュT：幼少期は一旦置いておきましょう！それ以降で存分に語れそうな作品は？
二式先生：「家庭教師ヒットマンREBORN!」ですかね。アニメも漫画も、小説版も読んで、友達とハマってましたね。
担当編集K：「吸血鬼ちゃん」に繋がる「ミニキャラが好き」っていうのは「リボーン」からだったっていうのを前に聞いてびっくりしました。
カドコミュT：確かにリボーン(姿は赤ちゃんだけど凄腕の殺し屋)を含めてミニキャラがいっぱい出てくる作品ですからね。
二式先生：デフォルメの感じとか、リボーンのシルエットの感じとかはすごい影響を受けましたね。
カドコミュT：ハマったきっかけは何だったんですか？
二式先生：きっかけは、最初の方に話しためちゃめちゃ絵が上手いクラスメイトです。家にいっぱい漫画を持っていたそのクラスメイトから、当時「ハマってる」って聞かされたのが、「リボーン」と「銀魂」と「D.Gray-man」の3作品で、自分も興味を持ってコミックスを集めたのが「リボーン」だったんです。デフォルメに惹かれたのもそうなんですけど、自分がバトル物が大好きだったタイミングに、当時のリボーンが六道骸と戦う黒曜中編をやっていて、それがカッコよかったんですよね。で、読み始めて、ヴァリアー編に入って完全にハマりました。
カドコミュT：「リボーン」には好きなキャラクターはいますか？
二式先生：ヴァリアー編で出てくる、ベルフェゴールという目が髪で隠れてるナイフ使いの敵キャラですね。なんか敵側を好きになりがち…みたいなところがあるんです。
カドコミュT：好きなキャラもするする出てくる…初恋アニメは「ポケモン」より多分これですね？
二式先生：そうかもしれないです(笑)。
カドコミュT：ちなみにそれ以前に別作品とかで推しキャラとかはいなかったんですか？
二式先生：「キャラクターが好き」っていう感覚はそれが初めてでしたね。それまでも一応「このキャラいいな」って思うものは男女それぞれありましたが、明確に「すげえ！めっちゃ好き！」みたいになったのはベルフェゴールが初めてでしたね。当時、マンガ読みの経験値が薄いところに爆弾を落とされた感じだったというか、所業の残酷さとか、あそこまで振り切れてるめちゃくちゃなキャラクターを見たのは当時初めてだったんです。
カドコミュT：ちなみに今好きなキャラクターとか聞いても良いですか？
二式先生：『ハズビン・ホテルへようこそ』の『アラスター』というキャラが好きです。トリックスターですとか、悪のカリスマ的な魅力を持ったキャラにすぐ惹かれてしまいまして……(笑)。本性をひょうきんな態度で隠している、そのギャップも好きです。
カドコミュT：ありがとうございました！アニメ終盤戦を楽しむとともに、二式先生の次回作を楽しみにお待ちしております！
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著者：二式恭介
あらすじ
血を吸われた者すべてが虜になる圧倒的尊み！ 新感覚甘やかし餌付けコメディ！
