赤羽にな1万字インタビュー:圧巻の“強者令嬢”描写で人気急伸!「悪役令嬢たちは揺るがない」ができるまで【前編】

話題漫画の作者に話を聞く「カドコミュ」インタビュー。
今回は2024年の連載開始から人気を博し、2025年末には「Renta!大賞」異世界部門大賞や「カドコミAWARD2025」ラブコメ・恋愛部門1位・総合3位をマークした『悪役令嬢たちは揺るがない』の漫画・赤羽にな先生にお付き合いいただきました。
漫画家にいたるまでの道程、同作の制作秘話、今までに影響を受けた作品各種など、根掘り葉掘り聞かせていただいたので、是非最後までお付き合いください。
ちなみにまだ本作品を全く知らない方々に…「悪役令嬢たちは揺るがない」とは…


折れない心=メンタルつよつよヒロインたちの反撃!
王立学園に聖女見習いの田舎男爵の庶子アイニ・ミッコラがやってきて半年。学園は混乱の極みにあった。貴族子息である男子生徒たちはアイニの無邪気で天然な可愛らしさに翻弄される一方、女子生徒たちはアイニの貴族マナーを無視した振る舞いに憤りを覚えていたからである。そんな中、巷で流行の物語になぞらえて「悪役令嬢」と呼ばれることになった三人の令嬢がいた。王太子の婚約者で清廉な侯爵令嬢セラフィーナ。商売で裕福な子爵家の気高き令嬢サンドラ。現宰相の侯爵家の聡明な令嬢ベルナルデッタ。いつしか学園内に不穏な空気が漂い始めた時、彼女たちがついに立ち上がる! アイニの間違いを正し、自らの心のままに進むために。
これは三人の「悪役令嬢」たちと聖女見習いが繰り広げる、女たちの生き様をかけた戦いの記録である――。
(カドコミより)

という…三人の有能令嬢が、天真爛漫な聖女見習いや彼女に翻弄される男たちと真っ向から対峙し、周囲から「悪役令嬢」扱いされながらも、気高く、強く、正しく、ぐうの音も出ない感じで彼女彼らを…きっちり正していく物語。
同時期同舞台での出来事を各人の視点から描く構成で、令嬢たちのスカッとする展開と強者感を多角的に楽しめます。(2/5本日発売の第3巻も乞うご期待!)
では、インタビュー始めさせていただきます。
■まずは全キャラの動きをエクセルにまとめるところから始まった
カドコミュT:赤羽先生、宜しくお願いします。まずは「悪役令嬢たちは揺るがない」のコミカライズの話を受けて、原作を読んだ時の印象などをお聞きしてもいいでしょうか?
赤羽先生:宜しくお願いします。八月先生の原作が面白いというのはもちろんなのですが、同じ時期、同じ場所の出来事をオムニバス形式で書いた物語は今まで出会ったことがなかったので、そういった部分ですごい最初に悩みましたね。そういった作品のコミカライズが過去にあったかって探そうとしたんですが、参考にできそうな作品を見つけるのがなかなか難しく… 。各キャラクターの物語を小説通りに描いた方がいいのか、全キャラの動きを分解して時系列に並べ直して描いた方がいいのか…っていうのに悩んだのを覚えてます。で、結局答えが出なかったので、一旦エクセルで全キャラの動きを並べた時系列表を作って…っていうところからまず始めましたね。
カドコミュT:あんまり漫画家さんから聞いたことのないファーストアプローチですね…
赤羽先生:結局は担当編集のY氏と相談したりして「並べ直したら原作の魅力がなくなるな…」っていうことになり、ある程度順番にやってこうかとなって、私の方で情報の出し方の調整とかをして、かつ各話の区切りは明確に表現するために、基本各キャラ2話ずつまとめていくっていう今の形でネームを出したって感じでした。
カドコミュT:最初にそこまで構成に悩んだってあんまり聞かないので…そうだったんですね。
赤羽先生:はい。原作はプロローグで世界観の簡単な説明から入るんですけど、「漫画にしちゃうと、この説明から入ったら読まれないかも」と思って、そのプロローグ部分を第2話の最初に持ってったり…なので最初「聖女」のことは実は全然説明してないとか、そういった順番変えや情報量の調整を色々やったりしました。
カドコミュT:なるほどですね。そう聞くと確かに漫画としてめっちゃ読みやすかったんだなと。
赤羽先生:いや、そういっていただくと非常に嬉しいですね。
カドコミュT:「悪役令嬢たちは揺るがない」には、今まで赤羽先生が作ってきた作品の中には無い苦労があったと。それにしては…手腕が見事ですね。
赤羽先生:今回で5作目のコミカライズになりますので、今までの経験が多少なりとも活かせてるのかなとは思います。多分初めてで「悪役令嬢たちは揺るがない」を描けって言われたら絶望してたと思うので。
カドコミュT:では、その経験として特に役に立っている過去作の話などお聞きしてもいいですか?
赤羽先生:そもそも最初の「私この度、王国騎士団独身寮の家政婦をすることになりました」が若干変わった形だったので…あれが何より一番勉強になったと思っています。担当編集Y氏にも本当にお世話になって作ったものでした。
■プロ漫画家になった理由が…未だに分からないんです
カドコミュT:なるほど。では、一旦「悪役令嬢たちは揺がない」から時間をさらに巻き戻しまして、赤羽先生の漫画描きヒストリーをお聞きできればと思うんですけど、赤羽先生はいわゆる漫画描き少女だったのですか…っていうところから聞いてもいいですか?
赤羽先生:一番最初は…多分あるあるだと思うんですけど、本当にお絵かき大好きな子供でしかなかったので、いろんな版権物の絵を好きに描いていて、そこから成長してアニメとか漫画のキャラクターを模写したりとか、コピック使って塗るとかいうのが全盛期だった時代を経て、マウスを使ってお絵かき掲示板に描き込みを始め…で、親に板タブレットを買ってもらってデジタルイラストを描いて自分のホームページで公開して…っていう、本当にインターネット黎明期の典型みたいな動きから入っていた感じですね。
カドコミュT:その時はイラストオンリーで、自分のホームページで反応もらったり、PVのカウンターが上がってくのが楽しかったり?
赤羽先生:そうです。で、同人誌即売会に興味を持って、出るためには何か作品を作らなきゃいけないっていうのを知って、よくわからないまま漫画を描き始めた…っていうのが一番最初ですね。
カドコミュT:「同人誌即売会に1回出たいな」で、「じゃあ本を作るなら物語もつけなきゃな」…で、初めてコマを割ったと? で、その後、プロ漫画家として入っていく扉がどっかにあったと思うんですけれども、それはどんな経緯で?
赤羽先生:いや、実は詳細が分からないんですよ。今の担当編集Y氏は実は2代目編集さんで、私に声をかけてくださった編集者の方は、それこそ「私この度、王国騎士団独身寮の家政婦をすることになりました」連載の前にお辞めになられてしまったので。本当に短い期間しか関わり合いがなくて。「私にお声がけいただいたきっかけって何ですか?」って聞く間もなく終わってしまったので…分からないんです。多分X(旧Twitter)かコミケかのどちらかだとは思うんですけど、ちょっと真相は分からないですね。
カドコミュT:あんまり聞いたことがないパターンですね。なぜ私が声をかけられたのか分からないが…プロになったと。
赤羽先生:はい。いつの間かなっていたって感じです。
カドコミュT:なるほど…では、ちょっと「私この度、王国騎士団独身寮の家政婦をすることになりました」の時の話を掘ってもいいですか? デビューの時じゃないですか。でも、なんで声かけられたのかも分からない状況で今の担当編集Y氏と組むわけですよね。で、それが3巻とかで終わらず、全7巻まで続いたという素晴らしいデビュー作品になったと思うんですけれども。
赤羽先生:はい、それは本当にありがたいことに。
カドコミュT:この時の苦労とか、勉強になったこととか、その後の糧になったなと思うのは何だったのか…別に「体力が付いた」とかでもいいんですけれども、お伺いしてもいいですか?
赤羽先生:そうですね。プロの漫画家として自信持てたというか…一番感謝したのやっぱり担当編集Y氏ですね。
カドコミュT:おっと。
赤羽先生:はい。ちょっと担当編集Y氏を泣かせてしまうかもしれないですが(笑)。当時の私は本当にどシロートの状態で「私この度、王国騎士団独身寮の家政婦をすることになりました」に入ってしまったので、多分一番最初の文字プロットとかネームをお見せした時に「ああ、素人だな……」って絶対に思われたと思うんです。けど、それをすごい根気よく直して「これがいいですよ」「あれがいいですよ」っていうのをすごい指導してくださったんですよ。あのおかげで今があるなっていうのはずっと思ってます。
カドコミュT:なるほど。じゃあ…ちょっとだけ担当編集Y氏に入ってもらって、今の話の感想もらっていいですか?
担当編集Y氏:あ、はい……あの…ありがとうございます…
赤羽先生:テレたみたいな感じになっちゃいましたね(笑)
カドコミュT:「ありがとうございます」10文字だとちょっと食い足りないので、もうちょっと担当編集Y氏のターン作っていいですか? 最初のネーム見たときの話しとか…
担当編集Y氏:当時から、決めゼリフというか、ここで決めたいとか、ここを描きたい、っていうのを分かりやすく作っていらしたんです。ですので、漫画の文法…みたいなものだけをお伝えしていきました。赤羽先生って、説明したことはまずどんな指摘でも絶対に一度スッと自分に入れてみて、納得なさったことはすごい速さで「理解! 修正!」という感じの方なので。あとはもう本当に持ち前のセンスでゴリッと人気作を仕上げてきてくださったので、私としてはただただラッキーでしたね。
カドコミュT:すごいじゃないですか。リスペクトがリスペクトを呼ぶ…いいコンビすね。
赤羽先生:ありがたい、ラッキーですね(笑)
カドコミュT:「私この度、王国騎士団独身寮の家政婦をすることになりました」の手応えが二人の共通感覚っぽいので、担当編集Y氏にも当時の詳細をもうちょっと聞いてもいいですか?
担当編集Y氏:はい。手応えという意味では最初からありました。連載がスタートした頃のFLOS(同作や今作のレーベル)はまだ新しいレーベルだったんですが、その中でも大事なフェアの1つに選んでいただけたりするような作品に、あっという間に育っていったという印象でした。何より、私としては赤羽先生という作家さんへの手応えがすごかったので「絶対に、この後も一緒に作品やりたいな」っていう気持ちで進めていましたね。
カドコミュT:なるほど。赤羽先生、アンサーいただいてよろしいですか?
赤羽先生:ありがたい話ですね。私はとにかく1巻出るまでどうなるんだろう…って、もう本当に分からない状態で必死でやっていたので、1巻までの記憶があんまりないんです(笑)。ありがたいことに1巻発売してすぐ重版っていう話を聞いて、しかもその規模が本当に大きかったので、その時に初めて「ああ、受け入れられてるんだ」って、手応えを感じられたかなっていうのは覚えてますね。
担当編集Y氏:最初に1巻の部数の連絡の際、営業さんに「もっと刷らなくて大丈夫ですか?」って言ったのは覚えてます。そしたらもう本当にすぐに重版がかかったんで…「どやーー!」ってなりました。
■「あくゆる」では今までの作品とキャラの顔だちを変えている
カドコミュT:生々しい、素晴らしい話でしたね。ここでちょっと「悪役令嬢たちは揺るがない」に一旦戻しまして、赤羽先生の描くセラフィーナ、サンドラ、ベルナルデッタの3令嬢ってかっこいいですよね。多分それも現在の今作人気の要素になっていると思いますが、赤羽先生が描く自立した令嬢は何であんなにかっこいいのか。描く時に気をつけていることがあれば教えていただいてよろしいでしょうか?
赤羽先生:まずキャラクター自体は原作の中でしっかり描かれているので、そこについては私がちゃんと出力すればいいかなと思っていて、そんなに気をつけてることはないんです。前の連載「『魅了』の乙女と堅物筆頭魔術師の初恋記録」から明らかに自分で変えようとしたのは、お顔立ちの雰囲気だけは今までの作品から変えようと思っていました。具体的には少しだけ目や口の描き方とか、ペン設定とかを変えてキリッとした芯のありそうなお顔になるように調整しました。第一印象って大事で、作品の雰囲気全体が変わるようにするには絵柄を変えるのが一番かなと思いまして。他にも画面作りでも、1つ自分の中で縛りを設けていることがあるんですけど…これは最終巻が出たらどこかで言おうかなって思っています。
カドコミュT:ほほう、今はまだ明かせないと?
赤羽先生:そうですね、最終巻の後書きかSNSでちらっと言おうかなって思ってます。
カドコミュT:ちなみに先の取材で八月先生のお話を聞いて、セラフィーナ編で「私はこの国を愛しております」っていう国母を思わせる決めゴマがあるじゃないですか。あれを描いていただことで、セラフィーナがSNS で「ママ」と呼ばれるようになったそうですよ。
赤羽先生:そう呼ばれてるんですか⁉ 初耳です。ありがたいですね(笑)
■サンドラはすごく描きやすい
カドコミュT:では…本作のメイン3令嬢、セラフィーナ、サンドラ、ベルナルデッタ …あと聖女見習いのアイニも含めて、4人の中で描いていて1番楽しいキャラクターを教えていただいてもいいでしょうか?
赤羽先生:そうですね…自分の中であんまり「順位」みたいなのはつけないようにはしてるんです。ですが、それを踏まえた上で言うのであれば、表情をつけやすいキャラは描きやすいんです。そういった意味で、サンドラは喜怒哀楽はっきりしてるのですごく描きやすいです。
カドコミュT:なるほど。サンドラ。 ちなみに、また八月先生に聞いた話ですが、サンドラは「出番の度に髪型変えて欲しい」ってお願いされていたそうですね。
赤羽先生:そうですね。でも、「私この度、王国騎士団独身寮の家政婦をすることになりました」の主人公・アズサも毎回ドレスを変えていたので、そのイメージで「よし、やるか!」と思いました。

毎回髪型が変わるサンドラ(一部抜粋)
カドコミュT:ちなみに、メインの4人以外で印象が強いサブキャラクターとかも聞いていいですか?
赤羽先生:周りからの意見…っていう形でのお伝えにはなるんですけど、私の周りではリュシアンがめちゃめちゃ人気ありますね。
カドコミュT:あ、やっぱり?
赤羽先生:「まぁ、分かる」って思いますよね(笑)。突然出てきた隣の王太子で、パッと見優しそうな顔している。でもベルナルデッタ編から視点が変わると、今おそらく読者のヘイトを買っているだろうアイニに対し、冷たいほどにズバズバと切り込んでいく人。その切り替えやギャップは、「あ、いいな」って思う方は多いかな、とは思いました。

赤羽先生の周囲で大人気のリュシアン
※前編は一旦ここまで。次回、本作に感じた手応え、本作連載開始前に練りまくった戦略、人生で影響を受けた漫画話…などを聞かせてもらったインタビュー後編(2/6更新予定)に続きます。

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赤羽にな(漫画) / 八月 八(原作) / 春野薫久(キャラクター原案)
あらすじ
折れない心=メンタルつよつよヒロインたちの反撃! 王立学園に聖女見習いの田舎男爵の庶子アイニ・ミッコラがやってきて半年。学園は混乱の極みにあった。貴族子息である男子生徒たちはアイニの無邪気で天然な可愛らしさに翻弄される一方、女子生徒たちはアイニの貴族マナーを無視した振る舞いに憤りを覚えていたからである。そんな中、巷で流行の物語になぞらえて「悪役令嬢」と呼ばれることになった三人の令嬢がいた。王太子の婚約者で清廉な侯爵令嬢セラフィーナ。商売で裕福な子爵家の気高き令嬢サンドラ。現宰相の侯爵家の聡明な令嬢ベルナルデッタ。いつしか学園内に不穏な空気が漂い始めた時、彼女たちがついに立ち上がる! アイニの間違いを正し、自らの心のままに進むために。 これは三人の「悪役令嬢」たちと聖女見習いが繰り広げる、女たちの生き様をかけた戦いの記録である――。




