2026/08/06

「わたしの幸せな結婚」原作者に聞く、最新作「神子と夜叉嫁」ができるまで 顎木あくみ2万字インタビュー【後編】

「わたしの幸せな結婚」原作者に聞く、最新作「神子と夜叉嫁」ができるまで 顎木あくみ2万字インタビュー【後編】

話題漫画の作者に話を聞く「カドコミュ」インタビュー。


今回は現在「宵を待つ月の物語」が連載中、さらに8月6日より新作「神子と夜叉嫁」の本連載が始まり、原作作品W連載となる顎木あくみ先生にお付き合いいただきました後編です。


2019年のデビュー作「わたしの幸せな結婚」(以下「わた婚」。明治大正風の帝都を舞台にした恋愛ファンタジー。当時画期的だった虐げられヒロイン×不愛想な超美形軍人の誠実で真っすぐなラブが大人気に)が漫画化、アニメ化、実写化と幅広いメディアミックス展開をみせて以来、多くのファンに支持され続けている顎木あくみ先生。


この後半では8月6日に本連載が開始した新作「神子と夜叉嫁」の話を中心に、顎木先生がプロ小説家になる以前の創作活動ヒストリー、今作「神子と夜叉嫁」を自身初となる(小説よりも)漫画先行で作った経緯と意図、今作に繋がる「村ホラー」ジャンルで興味を持った作品、そして雑談「個人的に、今アニメ化して欲しい漫画」の話まで…根掘り葉掘り聞かせていただいたので、是非最後までお付き合いください。

 

ちなみにまだ、この新作を全く知らない方々のために…「神子と夜叉嫁」とは…

鹿石村の当主である小祝家に嫁入りした術師の少女・杜 雅(もり みやび)。


結婚相手の朽遠は神子(みこ)と崇められる特別な存在だが、その身体は生まれながら呪いに蝕まれていた。山深くにある古い因習が残る村で、雅は朽遠を救えるのか――。


「わたしの幸せな結婚」顎木あくみ原作、コミカライズ先行でお送りする注目作!!

(カドコミより)

という、最初から超強めで自分から戦いに行くヒロイン(=雅)を初めて主人公に据えた…顎木先生的には大分意欲的な最新作です。


これまで奥ゆかしい…というか、何がしかの「控え目要素」のある女子(でも強かったり優秀だったりはする)を主人公にしてきた顎木先生ですから…そこが本当に新しい。


物語の本筋としては、強主人公・雅が嫁入りすることになった田舎名家の息子(メイン男子)・朽遠がガチガチに呪われてて虚弱なお姫様感があったりとか、その呪いにビビってる過激派村人たちが「●●様!」的な感じで雅を排外をしようとするとか…まぁ結構なレベルでドロドロ現代「村ホラー」なんですが…。


それに対して主人公・雅が「じゃあ行こうか、呪いをぶっ壊しに」と言い切る感じが心強い! また、呪いのせいで偏屈&威嚇気味になってる美青年・朽遠に対して「可愛い(猫みたい)」と…彼の理不尽暴言を「ツンデレ」で済ませる雅の感性が気持ちいい!という…その風合いが絶妙です。


強嫁による「因習村ホラー」返り討ち作品として、爽快な作品になっているので…是非皆さん読んでみてください!


では、インタビュー始めさせていただきます。

■人生で最初に買ってもらった本は「かいけつゾロリ」

カドコミュT:顎木先生、後編も宜しくお願いいたします。今回は先の7/24にプロローグである第0話が公開され、8/6に本連載(第1話)が始まったばかりの新作「神子と夜叉嫁」の話を中心に聞いていきたいんですが…最初にまたちょっと寄り道して、先生のヒストリー的な部分を掘ってもいいですか?


顎木先生:(笑)いいですよ。


カドコミュT:過去のインタビューを読んだところ、先生が小学校高学年の時影響受けた作品は「十二国記」(小野不由美先生)、「彩雲国物語」(雪乃紗衣先生)「アルスラーン戦記」(田中芳樹先生)ってなってるんですが…その前のご自身が記憶している最初の読書って何の作品です?


顎木先生:「かいけつゾロリ」(原ゆたか先生)です。


カドコミュT:かわいいですね。


顎木先生:小学校2年生くらいの時に、父が仕事帰りに1冊買ってきてくれたんですよ。これは「わた婚」の特装版のインタビューでも話したのですが、そのインタビューで当時のことを思い出して、後に母に「何であの時、父は『ゾロリ』を買ってきたのか? 何か意図はあったのか?」って聞いたんですけど…「分からない、覚えてない」って言われました。


カドコミュT:(笑) どこの家もそんなものですよね。


顎木先生:まぁでも、その「ゾロリ」で初めて本を1冊読んで、絵本から児童書へと移行した…いや、自分で本を読むように移行したというか…1冊読み終わって、面白くて、そのシリーズの他の作品も読みたいから学校の図書室に行くようになって、図書室にあったそのシリーズをだいたい読み尽くしたら、他の児童書系も借りて読んだり…と。だんだん小説を読むようになりましたね。


カドコミュT:めちゃ「ゾロリ」の功績がデカいですね…。でも「ゾロリ」から前述インタビューでの「十二国記」は…結構長いし大人でもハードル高い作品だったと思うんですが…その中間地点にあった作品なども聞いてもいいですか?


顎木先生:本当に図書室で目に付いて気になった本をいろいろ読んでいたので、記憶があやふやなんですけど…。「ハリーポッター」シリーズかな…いや、でもそれも小学校高学年で読んだような…。何だろう…ネズミが出てくる…「トガリ山のぼうけん」(いわむらかずお著)を読んだり、「黒ねこサンゴロウ」のシリーズ(竹下文子著)…あとは、海外の児童向けファンタジーとかを結構読んでましたね。


当時の私にはそこら辺が「ゾロリ」よりは文字多めというか…ちょっと発展した、でも「十二国記」とかよりは読みやすい児童書でした。

■最初に友達に読んでもらった自作小説は西洋風ファンタジー

カドコミュT:そこから先生は物語を考える少女になっていきます。多分、最初に考えて、書いて、友達や家族に見せたモノがあると思います。差支えが無ければですが…どんなものを書いたか聞かせてもらっていいですか?


顎木先生:そうですね…友達に最初に見せたのは小説じゃなかったですね。私、小学生の時はお絵描きが好きだったんですよ。なので、絵を描いて、その絵のバックにあるストーリーみたいなものを、帰り道に友達に話したりとかしてたのがまず最初にありましたね。


カドコミュT:どんなキャラクターを描いてたんですか?


顎木先生:私は中学校まで「なかよし」を読んでいたので、変身する女の子モノが好きで…そういうのを描いてました。


カドコミュT:いいですねぇ。そこから遠からず、先生の創作力は小説のような形になっていくと思うんですが…そっちも聞いていいですか?


顎木先生:小説の形で書いて、友達に見てもらってたのは…中学生の時からですね。当時、熱心に書いていたのは西洋風ファンタジーでした。お姫様だった主人公が、初恋の人が起こした事件によって城を追放されて、仲間を集めながら旅をして、願いを叶えるためにいくつかの宝物を集めていく…っていう話でした。


ちなみに数年後にとある漫画が世に出て、私はその作品がめちゃくちゃ好きなんですけど、読み続けていたある時に、当時自分が書いていた物語の序盤の設定がその漫画と似ていたことに気付いて「私って趣味変わってないんだな…」と思いました(笑)


カドコミュT:その作品名を聞いてもいいですか?


顎木先生:それは伏せさせていただければと…。私自身その作品が大好きですし、何かが間違って「私の方が先に考えてた設定だ」みたいにとらえられたら嫌だし、その作品を好きな人に嫌われたくないんです。本当に良い作品なので。

■学生時代の部活は合唱部、趣味はラジオ鑑賞だった

カドコミュT:なるほど…それはそうですね。では、中学生の時に読書以外で好きだったものとかを聞いてもいいですか? ちなみに顎木先生って何部だったんです?


顎木先生:合唱部でしたね。最初の数カ月くらいはバスケをやってたんですが、バスケ部は闘争心が凄いというか…文化系の人間にはキツくて(笑)。


カドコミュT:おぉ…でも吹奏楽とか合唱、演劇とか人前で何かやる系の文化部って、それなりに体育会系というか…けっこうマッチョ系な感じがありますよ。


顎木先生:(笑)合唱部も割と筋トレとか走り込みとかしていて…肺活量とか、腹筋も声を出すのに必要だったのでそういうトレーニングをしなければならなかったから、スポーツっぽいところもあったかもしれないですね。


カドコミュT:ちなみにその頃の顎木先生の娯楽ってどんなものだったんです?


顎木先生:趣味みたいなところでは…うちはけっこう厳しい方だったので、あんまりゲームとか漫画とかを…禁止はされてなかったですけど、「勉強しろ」って言われて勉強してるとそういうのを楽しむ時間があんまり無かったんですよね…。

なのでその頃のエンタメというと…ラジオを聞いてました。JPOPが好きというか、それを知っていれば、学校で友達の話についていけるな…という狙いがあって。有名なアイドルとかアーティストの流行りの曲を聴くのが好きだったので、そのランキング番組とか、JPOPをいろいろ流してくれる番組を聞いて満足していましたね。


カドコミュT:結構ストイックな青春ですね…。

■「村ホラー」を作るなら、小説より漫画の方が合っているはず

カドコミュT:ではそろそろ新作の「神子と夜叉嫁」の話に入りたいんですけど…今作を読ませてもらって「ヒロイン強くね?」が衝撃的だったんですよ。第0話(プロローグ)最後の決めゼリフ「それじゃあ行こうか、呪いをぶっ壊しに」が超イケイケじゃないですか。

※ジャ●プ作品の主人公かな…と思わせる、強気ヒロイン・雅は、今までの顎木先生の作品の中では革命的と言える(第0話より、プロローグ最後の決めゴマ)

顎木先生:(笑)


カドコミュT:「割と芯強めだけどつつましやかで不遇に負けないぞ女子」な主人公の多かった顎木先生が…って。この主人公・雅と物語はどこから着想したんですか? あと何でこの作品だけ小説ではなく漫画先行で先生がプロットを作っているのかの真意も聞きたかったりします。


顎木先生:まず「いいの思いついたぞ」って思ったんですよ。新しい作品とかそのためのネタとかは常に考えて書き溜めているんですけど…3年前の夏くらいですかね、そのころ「村ホラー」がジワジワ来ているなって感じがしていて、私もそういうのが好きだったので。


カドコミュT: 何か…おばあちゃんにいきなり叫ばれたり、村全体で「●●様」みたいな謎神様を祭ってたりする…いわゆる「因習村」系ジャンルですね。


顎木先生:で、「それと『嫁入り』ものを合わせたモノがやりたいです!」って言ったんです。でもそういう「村ホラー」って舞台が田舎になってしまうので、小説だとちょっと地味…というか、小説として読者さんにウケる雰囲気にはならないかも…と思いまして、これは漫画でやった方が良いんじゃないかと思ったんです。


やっぱり「村ホラー」系だと、その怖さとか…私は文字にするのが好きですけど、ビジュアルとして漫画の方が分かりやすいのかなと思いまして。それでこの作品は「漫画先行でやりたいです」と担当編集のK氏に相談して、そこからこの企画が始まった感じですね。

■「控え目ヒロイン」では村の因習に飲み込まれてしまう

カドコミュT: なるほど…でも主人公の雅、強過ぎじゃないですか?

※実家での不遇ゆえ、とっても強くなっている雅(第1話より)

顎木先生:(笑)因習のある村に嫁入りして、その因習を壊す主人公にしたいっていうのは最初からありました。でも、因習って…センシティブな話題になってしまうかもですが、その因習で苦しんでいる人もその土地にはいるっていう話になりますよね。


カドコミュT:そうですね…。


顎木先生:で、そこに「不遇で芯はあるんだけどそんなに強くないヒロイン」を送り込んでも取り込まれて終わってしまうじゃないですか。


カドコミュT:それはそうかも…。


顎木先生:なので、壊さないと意味が無いなと思って…最初から壊すヒロインで考えていました。

■勉強した「村ホラー」、「ひぐらしのなく頃に」が面白かった

カドコミュT:なるほど。だから過去イチの強ヒロインになったと…。ちなみに、そのヒロイン・雅については後でもうちょい掘らせていただくとして…先に先生にとって「『村ホラー』といえば」な作品を聞いてもいいですか? この「村ホラー」が怖かった、この村はめちゃくちゃ嫌だな…など、あったらでいいんですが。


顎木先生:うーん…この「神子と夜叉嫁」を書き始める前に、代表的な「村ホラー」はちゃんと見ておかなきゃなと思いまして…「ひぐらしのなく頃に」のコミカライズを読んだんですよ。


カドコミュT: 結構重たいヤツ行きましたね。


顎木先生:事前知識は「『村ホラー』で人が死ぬ」くらいの漠然としたイメージしか無いところから読み始めて。でも真相にだんだん近づくにつれて「これは『村ホラー』というよりむしろSFなのでは?」って感じられて、それが意外で面白くて。凄く印象に残っています。


カドコミュT:先生、SF好きですねー…(インタビュー前編参照)

■「不遇で健気なヒロイン」はもう十分書いてきた

カドコミュT:ここで、雅のヒロイン像の話に戻ろうと思うのですが、今までの先生の作品を象徴する「不遇で芯はあるんだけどそんなに強くないヒロイン(※いずれ強くなるけど)」から…インタビュー前編で話を聞いた現代ファンタジー「宵を待つ月の物語」の時点で、既にちょっとだけズレていた気はしたんですが…今回はもっとダイナミックにやったなという印象があります。先ほど伺った「因習に負けないヒロイン」は良しとして、それ以外の意図は無かったですか?


顎木先生:何故このヒロインにしたのかというところですと…因習を壊すというところはもちろんあるんですが、いい加減「不遇で健気なヒロイン」は皆さん飽きてきているんじゃないかな…と思ったんですよ。


カドコミュT:おお…何て正直な。確かに2026年現在、主に「お中世系」をメインにそれ系は溢れてはいますね。


顎木先生:(笑)和風にしろ西洋風にしろ、3年前の時点でそういう作品がたくさんあったし、私も若干飽きてはいるし…きっと読んでくださる皆さんも飽きているはずだと思っていて…。あと、ここ数年「強い女性」主人公みたいなのは割と人気じゃないですか…。

■和風ファンタジーと「強い系ヒロイン」は喰い合わせが悪いけど…

顎木先生:なので、「和風で強いヒロインがあってもいいな」って思ったんですけど…和風で強いヒロインって、実はあんまり喰い合わせが良くないんですよね。


カドコミュT:そうなんですか⁉


顎木先生:ええ。それも分かってはいて書いたんですが…。不遇な部分があるという私の作品における既存のイメージから外れ過ぎないように、キャラが強過ぎるヒロインにしたくはないというか…そんなところが難しかったんです。


カドコミュT:ほぅ…。


顎木先生:今、世の中にある「強い系ヒロイン」は私も好きなんですけど…厳密には好みドンピシャではなかったんですよね。底抜けに明るかったり、むしろ性格がひねくれてて悪役みたいな感じで…でも「結果最強」みたいな。それはどれも私の好みドンピシャな「強い女」ではないなと思ったんですよね。


カドコミュT:顎木先生のドンピシャな「強い女」とは?


顎木先生:古いかもしれないんですけど…腕っぷしが強くても、どこかそこに女の子っぽさが欲しい。何か…おしとやかだったり、健気だったり、美しいとか、そういう女の子らしさがある強いヒロインみたいなものを書きたいんです。


で、結果として普段はクールでおしとやかな雰囲気のあるヒロインが、スイッチが入るとめちゃくちゃ強いみたいな感じにしたら和風とも合うんじゃないかな…という下心というか、考えがあって…それが今作の雅になりました。


※確かに。バトル以外での普段では品がある雅(第1話より)

■「スパダリ」インフレからの脱却…おかっぱ弱イケ男・朽遠

カドコミュT: 和風ヒロインって繊細なバランスが必要なんですね…。では、話をメイン男性キャラ・朽遠の話に進めたいんですが…こっちのクセも凄いですね、先生。


顎木先生:(笑)


カドコミュT:今まで先生の書いてきた男性ってヒロインよりはフィジカルは強いんじゃないかなって感じだったと思うんです。でも朽遠は呪われてるし、臥せってるし、でもツンツンしてるという新種のメンズだったんですが、これは…何で?

※今の所、囲われヒロイン感が凄い朽遠(第1話より)

顎木先生:まず外見から言いますと、私は一番目には長髪の男性が好きで、その次におかっぱの男性が好きなんです。なので、おかっぱ男子を書きたいぞと思いまして、おかっぱにするんだったら病弱にしたら合いそう…みたいな。


カドコミュT:えっ、まず髪型からだったんですか⁉


顎木先生:(笑)でも、ある程度の計算みたいなものもあったんです。既存の作品でヒーローの属性はもうインフレしていると。貴族から王子から神から妖怪まで…世の中の作品がどんどんインフレしていってて、その中で「スパダリ」のイケメンをまた増やしたとて…って何となく思ってしまったんですよね。


カドコミュT:顎木先生の描いてきたメンズは、「不器用過ぎてむしろ可愛いクール純情イケメン最強軍人」(「わた婚」の清霞)とか、「自分にだけ素を見せて懐いてくる超絶美麗エンペラー」(「宮廷のまじない師」の白焰)とか、「良家出身のひたすら優しいイケメン若教師」(「人魚のあわ恋」の咲弥)とか…どれもえげつないくらいのスパダリでしたからね…。


顎木先生:「宵を待つ月の物語」もそうなんですけど、ド王道のスパダリをこれ以上増やしても面白くないし、それをやったらその他大勢の一人になっちゃうんだろうなと。


だったら自分の好みを盛り込んで、一見ウケなさそうなイケメンをヒーローにしようと思ったんです。で、ヒーローだけど弱いというところを前面に出して…雅が戦う主人公なので、ヒーローは弱くて助けられる側でいいやとは思っているんですが…でもそれだけじゃなくて潜在能力は何かありそう、みたいな。


カドコミュT:え、朽遠って強くなるんですか! ずっとイケもやしだと思ってました…。


顎木先生:後々強くなりそう、という気配はありつつ…な塩梅で今は考えています。そのうち二人の関係も発展していって、朽遠も活躍するんだろうな…って気配は感じていただけましたらと。


カドコミュT:ちなみに朽遠って今までにないくらいツンツン男子じゃないですか。あれって先生の好みですか?

※明らかに弱いのに、ツンをカマしてくる朽遠(第1話より)

顎木先生:(笑)好きですよ、ツンデレ。クーデレも好きですけど。少年っぽい見た目のイケメンがツンデレなのは、可愛いと思ってます。

■漫画先行で原作を書くために必要なこと…

カドコミュT:ちなみに今作は漫画先行の「村ホラー」ということで、普段よりも絵で怖がらせちゃおうかな…みたいな意図ってありますか?


顎木先生:まだ立ち上がりの部分なので、そんなに怖いところは無いと思うんですけど。プロットを書いていて、視覚情報みたいなものは意識してますね。


カドコミュT:先生が書いたプロットを託されたかづか将来先生が描く「神子と夜叉嫁」は、見開きの決めゴマとかカッコいいですからね。アクションの見せ方とかにもこだわってたりしますし…。


では、そんな今作で初めて漫画先行でプロットを作った苦労とかを聞いてもいいですか? 顎木先生は今まで4作品をコミカライズされていますが、その経験は活きてますか?

※恐らく…これまでの顎木先生のコミカライズ作品と比べて「神子と夜叉嫁」は大胆な見開き使いが多く、その漫画的な盛り上げ感が凄い(第1話より)

顎木先生:大前提としてコミカライズは漫画家さんの作品だなとは思っています。漫画家さんによって表現の仕方も個性があるので、コミカライズだからいつもどうっていうことは無くて、その時々ですよね。


そんなに口を出すものではないなと思っていまして、原作と照らし合わせてキャラの口調を調整したり、ここはちょっと矛盾になっちゃうかもみたいな指摘をしたりくらいな程度に監修は留めさせてもらっていると思います。


なので、コミカライズをいろいろしてきたのが今回の「神子と夜叉嫁」に活きているかと言われても、そこまでは…というところもあるんです。


でも、ネームとかコマ割りとかを今まで見せていただいているので、学べたところとかイメージしやすくなっている部分はあると思いますし、そういう学びはさせていただいているかなと思います。


カドコミュT:今回はプロットを漫画の話数ごとに切ったりする必要があったと思うんですが、それらはどうでした?


顎木先生:書いているスタイルとしては小説形式なんですが、漫画の原作になりやすいように書いてはいて…。


それを書くにあたって電子書籍のサイトとかに行って…最近は漫画の第一話を無料で試し読みできたりするじゃないですか。それを片っ端から読みまくって、良い感じの第一話に盛り込みたい要素を参考にさせていただいて、それ以降の展開とかも自分の手持ちの漫画を読んでどれくらいのストーリーのペース配分にしたらいいのか…みたいなところを勉強させていただいたのはあって、そういったところをかなり意識したかもしれません。


カドコミュT: めちゃくちゃ漫画勉強してるじゃないですか。


顎木先生:(笑)あとは…小説で書くと情景描写とかもいっぱい書かなきゃいけないんですが、今作は漫画先行で、そこは漫画を描かれるかづか将来先生にビジュアル面を信じてお任せできるのでそんなには描かずに、心情描写もそんなに書いても漫画には盛り込めないと思うので削ったり…そうこうしているうちに雅の淡々としていて冷静みたいな性格が、不思議とその書き方にマッチしていったなというのは感じています。


カドコミュT: 現時点で、顎木先生は漫画「神子と夜叉嫁」の第2話までを監修として見てらっしゃると思うんですけど、その中で一推しのコマについて聞いてもいいですか?


顎木先生:それは第1話ラストの方の見開きですね。カッコイイですよね! 宣戦布告という感じで描いていただいて。皆様にも「あ、いいな」って思っていただけたらと。

※雅がひたすら強すぎる、第1話クライマックスの決め見開き。

■小説で書いていない「誰も知らない先の展開」を楽しんで欲しい

カドコミュT: まだ始まったばかりの「神子と夜叉嫁」ですが、 先々が楽しみになるようにメッセージをいただけますか?


顎木先生:「神子と夜叉嫁」は漫画が先行で、小説とかはまだ何も無いので、ただただ先の展開など誰も知らない物語として楽しんでいただければと思います。


見どころとしては…雅と朽遠としては…雅は第1話でもう朽遠に好感触ですが、朽遠の方は雅に心を全然開いていないので、そんな二人の関係性がこれから進展していくんだろうな…というところを期待しながら楽しんでいただければと思います。


カドコミュT:ちなみに前回のインタビュー前編では「宵を待つ月の物語」のマスコットキャラ的なゆきうさの話を伺ったんですが、本作でも雅についている式神「錦」が女子っぽい感じで言いたい放題な感じが可愛いし面白いなと思ってまして…その話も聞いていいですか? こっちも商業マスコットキャラ狙いの匂いが…。

※顎木作品史上、過去イチ女子トークを乱発してくる雅の式神・錦(第1話より)

顎木先生:(笑)あまり見かけない、意外性のある動物で式神にできる良い感じの生き物がいないかな…と思っていて…。これも好きな漫画ではあるんですが「少年サンデー」で連載されていた「結界師」(田辺イエロウ作)で、主人公のお兄ちゃんが鯉の式神を持っていてそれがカッコイイと思ってたんですよ。


カドコミュT:あれカッコいいですよね。


顎木先生:そこから「魚いいね!」と思って、和風だし。で、雅は女の子だし、女の子が持っている式神として「金魚っていいよね」となって…雅は口数が少ないので。良く喋る式神にしよう…と思い至りましたね。

■【マンガ好きおまけ雑談02】:「マチネとソワレ」をアニメ化して欲しい

カドコミュT:ありがとうございました。前回同様、締めのおまけ「カドコミュ」インタビュー…「ただの漫画好き雑談」をもう一個いただいていいですか? 前回同様(前回は「46:このSFが凄い」をいただいているので気になる方は是非チェックを…)我々が用意した100個のトークテーマを、また1つだけ選んでいただいて…。


顎木先生:では…今回は「09:本気でアニメ化して欲しい漫画」の話をしたいかと…。


カドコミュT:お願いします!


顎木先生:私、「マチネとソワレ」(大須賀めぐみ作)っていう漫画が大好きで、ぜひアニメにして欲しいんです。


カドコミュT: 全然、前編のSFと文脈が変わった! 読んでらっしゃるものの幅が広いですね。


顎木先生:いや…気になったものをすぐ読んでるだけで(笑)。でもこれも自分で稼がせていただけるようになって、軽い気持ちで電子書籍をポチれるようになってから、たくさん読めるようになったって感じですよ…。


広告で気になったら、すぐ読んじゃうみたいなところがあって…。


カドコミュT:それは是非是非いっぱい読んでいただきたい。


顎木先生:「マチネとソワレ」も、Xの広告で気になって、そこから読み始めた作品なんですけど…めちゃ好きで、面白いんです! 主人公が俳優で演技を頑張る話なんですけど、一番凄いなって思うのが、その才能と成長のバランスがめちゃくちゃ良いんですよ。


主人公はそもそも才能が凄いんですけど、それよりも凄いと言われるお兄ちゃんがいて、「それよりは…」みたいに周りも本人も思っていて、でも…主人公凄い才能あるんですよ! 


その才能ある主人公が、実績も何もないパラレルワールドに飛ばされてイチから俳優としてのキャリアを積んでいくわけですよ! 


そのキャリアを積んでいく中で、もともと才能ある主人公がどんどん成長して、さらに力をつけていくみたいな…そのバランスがもの凄くいいなと!


全然才能ないキャラがそのパラレルな世界に行っても面白くないし、「才能全開チート級」みたいなヤツがそこに行って無双しても面白くないんですよ…。そこに「才能あるけど伸びる余地もある」で勝負する…みたいなこの作品のバランスが凄く好きです。


カドコミュT:新規読者がその魅力の適正値を感じられるまでは…最小限で何巻まで読むべきですかね?


顎木先生:やっぱり一番盛り上がる「孤島の鬼」編の10巻までですかね。そのクライマックスがめちゃくちゃ熱いです。


カドコミュT:ちなみに、超ダメ元ですが…推しキャラとかいますか?


顎木先生:前編の「ワールドトリガー」話でも言いましたが、私はなかなか推しキャラを作らない人間なので…でも主人公の三ツ谷誠はちょっとヘタレなところもあったりして、ずっと応援したくなりますね。


ちなみに「孤島の鬼」編の後に、主人公が声優に挑戦するエピソードが来るので…そこまでをアニメ化していただいて、それをアニメの中で声優さんにリアルでアフレコで表現していただいて…っていうのが見たいです。


カドコミュT:ありがとうございます! 現在W連載となった「宵を待つ月の物語」「神子と夜叉嫁」、両方とも今後の展開を楽しみにしております。

■今すぐ読む

かづか将来(著者)  顎木あくみ(原作)


あらすじ

鹿石村の当主である小祝家に嫁入りした術師の少女・杜 雅(もり みやび)。


結婚相手の朽遠は神子(みこ)と崇められる特別な存在だが、その身体は生まれながら呪いに蝕まれていた。山深くにある古い因習が残る村で、雅は朽遠を救えるのか――。


「わたしの幸せな結婚」顎木あくみ原作、コミカライズ先行でお送りする注目作!!

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